月が一番近づいた夜、路地裏では猫が鼠と餌を分け合い、通りの梅の枯木が恥じらうようにそっとつぼみをほころばせた頃、
もうずっと梅毒を患っていた女郎の顔が元に戻り、起き上がるとまるで初めての夜のように、愛しい男を抱きしめた。月が一番近づいた夜、いつも後一歩が踏み出せなかった結城翔太は一晩に女三人を口説いてみせ、
風邪の治った坂本龍馬は、近江屋で刺客と共に軍鶏鍋をつついて大声で天下国家を論じた。