小説

□これは、恋なんかじゃない
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いつもと変わらない日々

今日も、そのはずだった………。

「はぁぁ」

ついつい、深いため息をついてしまう。

全く、あのじじ…いや、閻魔大王は………言うならもっと早くいってほしいものだ…。


「はぁ」
再び深いため息をついた。
…せめて、他の部署ならまだよかったのだがよりによって白澤の所に行かなくてはならない…。



本人に会わなくては、終わらない書類があるのだ。

疲労と白澤に会うという気持ちの重さから、足取りも自然と重くなってしまう。


ガラッ
勢いをつけて"極楽満月"の戸を開いた。

「うわっ!」ビクッ
中にいた人物の肩が小さく震える。

「…なんだ、お前かよ」
鬼灯の姿を捉えると肩を震わせた白澤が小声で呟く。

「お前とは、失礼ですね」

「うるさいな、一体何のようだよ!!」
不機嫌そうな声で白澤が叫んだ。

よく見ると白澤の左頬が赤く色付いている。

「…また、フラレたんですか」

「なっ!そ、そんなのお前に関係無いだろ!」

泣いていたのだろうか目も僅かに腫れているようにみえる。

「貴方が泣くなんて珍しいですね」

「うるさいって言ってるだろ!」
今回の子は結構本気だったんだよ…。

蚊のなくような声で白澤は呟く。

鬼灯の心がチクリと痛む。

「?」(なんだ?この痛みは…。)

「だいたい、こういうときはさぁ、そっとしとくもんでしょ?空気よめよ」

「…」

「わかったら、さっさと用事すませてかえれよ!」
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