小説
□君、恋しい
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チュッ
一瞬、何が起こったのか、わからなかった。
でも、確かに何かが唇に触れた。
離れていく鬼灯の顔。
そこで、何が起きたのか理解した。
「なにするんだっ!?」
「…」
鬼灯の深意が知りたくて僕は怒鳴り声をあげた。
彼は何も言わず、ただ僕の顔を見つめる。
自分でも、顔が赤くなっていくのがわかった。
なんで、そんなに俺の顔を見つめるんだよ!
顔の熱が治まらない。
再び鬼灯が近づいて来る気配を感じた
白澤はそれから逃れるように後退りしたが壁際に追い詰められ鬼灯の両腕にはさまれた。
体が固くなる。
今、自分は一体どんな顔をしているのだろう。
また、鬼灯の顔が近づいてくる。
押し退けたり、拒否するのは簡単だった。
だけど、何もできなかった。
もしかしたら、望んでいたのかもしれない。
今の、この状況を。
静かにめを閉じる。
軽く触れるだけの口づけ。
それは、とても甘く優しいものだった。
―――どうしよう。僕、鬼灯のこと好きかもしれない。
そのとき、何かが始ったようなそんな気がした。
end