小説
□風邪
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「蝶左、薬草を取りにいきたいんだが手伝ってくれないか?」
そう言って俺を誘ったのは薬馬小四郎。現在、共に旅している医者だ。
「…まぁ、暇潰しに付き合ってやってもいいワケ」
蝶左が暇潰しといったのには訳がある。
この町には調べ物をしに来たため暫く滞在していたのだが本も大分読んでしまったし烏頭目達も出掛けてしまっていたため特にすることがなく暇していたのだ。
なので、薬馬が誘ってくれたのはいい運動になるし、ひまも潰せて一石二鳥なのでここで声をかけられ都合がよかったのだ。
だが、朝から気分がすぐれなかったのが少し気になっていたが動けば治るだろうと薬馬の提案を受け入れたのだ。
それから、宿をでて、所々で薬草を摘みながら山の方へ入っていった。
街から離れて暫くしたころ
ザーザー、と生憎なことに雨が降りだしてしまった。
運よく、すぐ近くに山小屋を見つけることができたので暫くそこで様子を見ることにした。
時刻は正午を少し過ぎたくらいだ。
「ごほっ…ゴホッゴホッ」
「蝶左!大丈夫か!?顔が赤い熱があるんじゃ…」
「あー…。たいしたことねーって心配いすんな医者、ちょっと休めばすぐなおる…ゴホッゴホッ」
「そんなに咳をしてるのに大丈夫なわけあるか!!」
山小屋には偶然にも布団のようなものがあり薬馬はそれを敷いて蝶左にここで寝るように促した。
「ほら、寝てる方が少しはマシだろ!薬用意するから大人しくここで寝とけ!」
しぶしぶながらも蝶左は薬馬に言われた通り、布団に寝転ぶ。
(…まぁ、確かにちょっと楽かも…、あー…やべぇ熱、上がってきた
かも…あー…くらくらする…)
そこで一瞬蝶左は意識を手放す、が
すぐに唇に違和感を覚え目を開けた。
すると、すぐ近くに医者の顔があった
「ッ!?」
離れたと思ったら口のなかに何かが流れ込んできた。
苦い。
どうやら意識を失ったため口移しで薬を飲まされたようだ。
(…って、ちょっと待て気を失ってんだから飲ませる必要ねーだろ!つか起こせばいいだろ!?なんで、口移しに躊躇しねーワケ!?)
熱に浮かされて考えがまとまらない頭で蝶左はぐるぐる考える。
「あー…医者、なんで口移しで薬飲ませたワケ?」
「!起きたのか、…そりゃあ、蝶左が薬飲む前に寝たからだろ」
「あー…まぁ、そうかもしんねーけど起きてからでも良かったんじゃねーか…コホッコホッ」
「…そうか、それもそうだな…悪かったな蝶左」
「…あんた、誰にでもそーなワケ?」
「いや、そんなはずはないんだが…」
微妙にはっきりしない様子で薬馬は答える。
自分でもよくわかってないようだ。
「まぁ、それはもういいとして俺医者がいると寝られねーんだけど」
「そうか、刺青が…あれ、でも、さっき…」
「さっきのは、一瞬気を失っただけで寝たワケじゃねーし」
「じゃあ、無理に眠る必要はねーから目を閉じるだけでも閉じとけ、なんもしねーから」
「あぁ、わかったワケ」