忍たま

□たまにはゆっくり
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彼と出会ったのは至極単純で。


僕が中庭で蛸壺を掘っていた時のことだった。


彼は周りを見ていなかったのか

ただ不注意なだけなのか。


僕が穴を掘っている最中に上から落ちてきた。

「………っつ、びっくりした〜。」

その声はあまりに呑気な感じで。

僕は穴を掘る途中で邪魔されたので少し不機嫌になってしまった。

「何してるんですか…先輩」

そう言うと彼、尾浜勘右衛門は
笑って答えた。

「…あはは〜ごめん、考え事してた」

ぼ〜っとしてたそう言いながら頭をかく。

僕は呆れたように溜め息を吐くと
先輩に向けて言った。

「…次は気をつけてくださいね、」

そう呟いてから僕はまた土を掬い上げた。

…穴堀りを続行する。


されども彼、尾浜先輩は一向に穴から出ていこうとしない。

正直いって邪魔だ。

「あの、尾浜先輩。」

登らないんですか?

そう言って、僕は穴の入り口、先輩が落ちてきた所を指差す。

「ん。もう少しここにいちゃだめか?」

そう言って僅かに首を傾げる。

…なにがしたいのだろうか…。

意図が読めない僕はとりあえず、

「…勝手にしてください」

と言って作業に戻る。

ただ黙々と僕は穴を堀り続けている。

「なぁ、綾部。今、楽しいか?」

突如として聞いてくる。

意味がわからないと言う顔をしたあと。

「えぇ、楽しいですよ?穴を掘るのはある意味僕の生き甲斐のような気がします。」

そう言ったら先輩は可笑しそうに笑った。
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