小説

□【続編2】満月の夜
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「なんだ、糸目か」

臨戦態勢だった、蝶左の体からわずかに力が緩められた。

「…お前、煙草なんか吸うんやな…。」

蝶左が手にしたキセルを見ながら空は薄く開かれた目を光らせた。

「あー…。まぁ、な」

少し、バツが悪そうに呟く。

まだ、蝶左の体からは力が抜けきれていない。

警戒しているのか体制はいつでも動けるようにという心持ちが伺える。

「…そんな、警戒すんなや。」

「あ?悪ぃな、、、癖なんだ」

そう、言いながら蝶左は座り直した。

「…眠れんのか?」

「…あぁ」

空は蝶左のそばまで近づき言った。

「座るで?」

「…好きにすれば言いワケ…」

蝶左の了承を得てから、空は隣に腰を下ろした。

「こんな時間にここでなにやってたんや?」

「それはこっちの台詞なワケ、俺のは…見ての通りなワケ」

確かに言われた通りだ、キセルを持っているのだからここには煙草を吸いにきたのだろう。

逆に自分がここにいる理由はない。

「ワシは…」

少し間をおいてこたえる。

「たいしたことやないわ。今夜中に調べたいことがあっただけや。」


「ふーん…もう、済んだワケ?」

「あぁ、わけないわ」

簡潔に答える。

しばし、沈黙が続く。

「…なぁ」

「なんだ」

「…ワシ、どうやら蝶左のこと好きみたいやわ」

「はぁ?急にどうしたワケ糸目」

突拍子もなく空は想いを紡ぐ。

「なんや。おかしいか?」

(どういう意味なんだ?普通に烏頭目が言う友達として好きって意味か?)

「蝶左はワシのことどう想う?」

そっぽを向かれているせいで空の表情は窺えない。

「あー…好きなワケ、多分な。悪い奴らじゃねーし、一応仲間なワケだし、まぁ、まだ刺青は見せれねーけどな。」


「ふーん。まぁ好きならええわ。刺青もそのうちな」


(…できりゃーいけどな)

「あ、でもな蝶左、ワシが言った好きってのは愛してるのほうやで?」

そっぽを向いていた顔をこちらに向け柔らかな笑みを浮かべつつ軽い調子で言う。

「なっ!?なに言い出すワケ!?」

空の表情から冗談だとは思っていながらあまりの事にあわてて言い返す。

「つまりな抱き合ったり、接吻とかしたいって意味なんやけど…」

細い瞳が開かれ意味ありげに微笑む。

「ちょっ、糸目、お前、男が好きなワケ?!」

あまりのことに動揺が隠せず声が大きくなる。

「かっかっかっ」

いつもの調子で。

いつもの表情で楽しそうに笑う。

「からかったワケ!?」
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