小説
□風邪
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どれくらい時間がたっただろうか。
一向に外の雨はやむ気配がない。
蝶左はフッと目を開けた。
すると薬馬はコックリこっくりと、
頭を上下に揺らしながら眠ってしまっていた。
暫く寝転んでいたおかげで熱は大分下がったようだ。
蝶左は身を起こして薬馬を布団に寝かせ、薬馬がつけたであろう囲炉裏に身を寄せた。
窓の外を見ながら蝶左は思った。
(この雨じゃ、今日は宿に戻れそうにねーワケ…)
「…ん…」
「ん?医者起きたか?」
「あぁ…。ん!?俺寝てたか」
「少しだけな」
「悪い!蝶左の布団とっちまって…」
「いや、それは別に…それに医者のおかげで熱は下がったみてぇだしな」
薬馬は起き上がり、蝶左にすりよった。
「蝶左、もう体は大丈夫なのか?」
「あぁ、多分医者の薬のおかげでな」
「そうか、よかった」
そう言い、ホッと息を吐いた医者は安心したようだった。
(…でも、まだなんか体の芯が熱いんだよな…なんつーか疼くっていうか…これも風邪のせいか?…)
まぁ、心配させんのも面倒くせーしその内なくなんだろ、
と蝶左はそのことを言わないでおいた。
が、このことを後で後悔するはめになるとはこの時の蝶左は思いもしなかったのであった…。