稲妻11

□サクマドロップ
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『佐久間ってよく飴なめてるよね』

「ん?そうか?」

佐久間の隣で歩いてると、甘い香りが漂ってくる。
いちごみるくとか、普通にミルクとか、そういういかにも女の子!って香り


『乙女だねえ……』

「なんでオレが乙女になんだよ」


気に食わなかったのか頭を小突かれた。
手加減してくれてるのは分かるけど結構いたい。
私の頭はイルカさんでいうメロン並みなんだ。

「しおりも食うか?」

『いんや、いいや。甘ったるそうだし』

「ふーん……」

甘いのは嫌いじゃない。
ただ、そういう気分じゃないだけで。

だってほら、今は日も落ちて空も真っ暗だ。
こんな時に口の中が甘いなんて、目と口の感じ方がごっちゃになる。
こういう時はコーヒーとかがかっこいいんじゃないかな。
コーヒー飲めないけど。

そう話してみれば、
コーヒーミルク味もあるぞと茶色の包み紙を出して見せた。
……そういう話じゃないんだ、うん。


『ミルク系の飴好きだねー』

「そんなにミルクばっかなめてるか?」

『さっきいちごミルクなめてたくせに何を言うか』

「………………」

『……佐久間?』

何か思うところがあったのか、立ち止まって黙りこける佐久間。
もしかして何か悪いことでも言ってしまったんだろうか、と考えてみるが
やっぱい何も思い当たる節はない。
でも、自分の何気ない一言が彼にとっては地雷だったのかもしれないし……


「しおり」


ようやく喋ったかと思うと、彼に目をやると、
いつもとは違う真剣な顔つき。
やっぱり怒ったのかな、なんて思って謝ろうとしたが、
佐久間はそんなこと気にしていない様子で話し始めた


「ミルク飴のおまじないって、知ってるか」

『おまじない……?』


そう言われて考えてみたものの、まったく思いつかない。
というかおまじないというものは成功したためしがないのであんまりしなくなったのだ。
小学校まではよくやっていたんだけど。

とりあえず首を横に振ってみると、
そうか、と小さく呟いたかと思うと、私の手を握った


『え、あ、あの、佐久間……?』

「ミルク飴はな、相手のことを想いながら無言で噛まずになめきると思いが叶うらしいぞ」


お前が話しかけてくるから毎回失敗だけどな、と付け足す。

………つまり、そういうこと?

佐久間は、恋愛成就のためにおまじないをしてるのに、
私が邪魔してるから、毎回苛々してるってこと?


……それなら、怒っても仕方ない。



『佐久間、ごめん!!』

「………は?」

『私のせいでおまじない成功しなくて!だから、怒ってるんだよね!?』

そう勢いよく喋ると佐久間がぽかんとしたかと思うと、突然笑い出した。
あれ、私、何か変なこと言ったかな。



「……馬鹿。好きな奴の話を無視出来るはずないだろ」

『…えっ……』


ほんの少しだけ、唇に何かが当たった気がした。


「…………じゃあな」


気付けば、もう私の家の近くで、
送ってもらっちゃった。なんて考えるほど私の脳は賢くなくて


『え、え、えぇええええっ?!!』


いわゆるりんごのようなほっぺ。
それくらい頬を染めながら、私は彼が走り去って行くのを見ているしか出来なかった。




彼の思い人の名前と、
彼のした行動を理解するまで、後、10秒。




サクマドロップ

(彼の唇は)(ミルク味)







***

佐久間たんぺろぺろ

20110820

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