稲妻11

□それでも愛してくださいと
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それは、はじめて学校を破壊した時のことだった



『……レーゼ』

「?! シオンさまっ…!どうしてここに?!」

『今日、学校壊したって聞いたから』

「……ぁ、………」


こころがズキンと、痛んだ気がした
彼女はそんな私のことをどう思っていらっしゃるのだろうか


『大変だったね、大丈夫?』

「…………え……?」

『落ちてきた瓦礫とかで、怪我したりしてない?』

「……は、はい!全然大丈夫です!」


うまく喋れなかった気さえするけれど、
とにかく心配してもらい感謝の言葉を述べる。
すると彼女は綺麗に笑って、


『それなら良かった』






あんなことがあってから、何日時が経ったのだろうか。
私は雷門中との三度目の戦いに出向こうとしている。

勝てる予想などしていなかったし、
負けない気もしなかった。
だから、メンバーに最後の戦いだと言うほど、
我々は切羽詰っていたのだ。



「………しおり、さん。」


会いたくて、会いたくて。
つい心の声が漏れた。

どうせ誰も居やしないと。
聞かれたって何も変わりはしないと。


そう脳が判断して口から零れた心の声だった。



『シオンさまでしょリュウジくん』

「えっ、ど、どうして、ここに…っ?!!」

『んー、試合前に元気付けようかなと』


……最初の試合の時も、次の試合の時も、
彼女は決まって会いにきてくれたわけじゃない。

彼女が、会いにきてくれるのは


「わたし、次の戦い、勝つ自信が無いです……」

『!』

「所詮、我々はセカンドランクですから……」


俯き気味にそう言えば、彼女は何も言えずに黙ってしまった。
……当たり前だ。事実を言っただけなのだから。
自分たちが一番弱いチームなことくらい、私だって解って……


『負けてもいいよ』

「……えっ…?」

『負けてもいいから、思いっきり楽しんでおいで』

「…………………」


"楽しむ"?

サッカーを、楽しむ?


そんな、とある日から1回たりとも聴かなくなった言葉。
それを、彼女は私に言っている。

楽しむ?楽しむって、そんなこと―――………


『……ずっと待ってるから』

「………!!」


彼女の言葉は、少なからず私を自惚れさせて、
私の心を奮い立たせる。
少しでもやる気が起こったのか、立ち上がる元気も出た


「負けるかも、しれません」

『うん』

「………それでも、」

『…………』


「それでも、待っててください」

『……了解しました』







それでも愛してくださいと

(言えなかったのに)(貴女は微笑んでくれて)









***

レーゼさまの上につくのと下につくの、
どっちも良すぎて選べない


201109

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