稲妻11

□熱視線で解けゆく
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私は自分で言ってて哀しくなるけど、
アニメ漫画のキャラクターのような可愛さを持ってるわけでもなく、
特別心が清らかだというわけでもなく、
まあ所謂一般人なわけで


「………」


つまり告った告られたなんて色恋沙汰なんて
今まで全くない人生を送ってきたのです。


『………』


…………なので。




「……今日も可愛いね、しおりさん」

『…………………!!』


こういう口説き文句という奴に、心底慣れていないのであります。

















『あ、あの……吹雪くんどうしてここに?』

「しおりさんがここでバイトしてるって聞いてとんできたんだ」


まあ、確かに最近親友のまとろちゃんにバラしましたが!
あれか?情報提供してるのか?そうなのかまとろちゃん!

そんなことを考えてると心を読んだように、


「ボクサッカー部でまとろさんに君のこと聞いてるんだ。目新しい情報がないかって」

『…………そう、ですか』


まとろちゃんんんんんんんん!!
確かに吹雪くんとの仲のが古いかもしれないけど!
私達親友じゃあなかったの……!


「まとろさんも応援してくれてるよ、"二人がくっついてくれたら嬉しい"って。」


私は全然嬉しくない!嬉しくないよまとろちゃん!
大体私は男子が苦手なんだ喋ることなんてほんとはしたくないんだ!
あ、烈斗くんは別ね。可愛いから許す


「ボクも結構可愛いと思うんだけどなあ……」

『ちょ、ちょくちょく私の心読むの止めてください!』

「顔に出てる」

『………!!』


そ、そんなに私は解りやすいのか……と少し落ち込んでいると、吹雪くんがお金を手渡してきた。
………ま、まさか賄賂……?!


「なんでそうなるの。ボクお客さんだよ?」

『す、すみません!……ってだから心読まないで下さい!』

「君の好きな味がいいな」


この人はこういう類の口説き文句?を何処で憶えているんだろう。
あれかな、少女マンガ研究してるとか……もしそうなら面白いかも。
なんて想像しながら、私の一番好きないちごミルク味のアイスをコーンに乗せる。
お待たせしましたと言って手渡すと、彼に微笑まれた。


「かわいい好みだね」

『……どうも。』

「…………」

『? あ、あの……?』


何故この人はアイスを受け取らないんだ。
ひやかしか?ひやかしなのか?


「それ、仕事頑張ってる君にプレゼント」

『……仕事中は、飲食禁止されてますので』

「……そうなの?じゃあ……」


いい加減取ってくれないとアイスが溶けてきている。
何でこんなに解けるのが早いんだ。
冷え性のはずの私の手はそんなに温かいわけでもないのに!
そんなことを考えていると、冷たい感覚がした。………その瞬間、


『!!!』

「……君ごと、お持ち帰りしてもいいかな?」

『……な、なななっ……!!!』



指に絡みついた唾液は、彼が舐めた証で。
まだほんの少し温かい感触が残っていたせいか、
アイスが溶けた理由がなんなのか、
ほんの少し解った気がした。










(この鼓動の理由は)(まだ解る気はしない)













***

君ごとお持ち帰りとかわろた


20111105

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