「――…さん、僕と付き合ってください!」
金色の髪が下へ垂れる。勿論私が頭を下げたからだけど。
「…?! あ、あの…」
「ごめんなさい。私貴方の気持ちには応えられないの」
「……どうしてですか?」
哀しそうに聞き返した彼には少し悪いけれど、私はにっこりと満面の笑みを浮かべこう言った。
「たっだいまー」
「あ、おかえりしおり。今日は遅かったっスね?」
「例のごとく呼び出されてましたー」
珍しく私より早く帰っていたその人は、私の声を聞くと同時に私を玄関まで出迎えに来た。
靴を脱いでぴょんと肩に飛びつくと、驚きつつも抱きしめ返してくれる。
「ちゃんと断った?」
「もちろん!だってしおりには涼ちゃんが一番だもん!」
「しおり…俺だってしおりが一番好きっスよー!!」
興奮して強く抱きしめてくれる時は、ほんのちょっとだけ苦しいけど、
涼ちゃんが幸せそうだから別に我慢できるんだ。
今日みたいに私が遅い時はご飯まで用意してくれるの。
お父さんとお母さんが夜遅くまで帰ってこなくても、涼ちゃんがいるからへいき。
「涼ちゃん明日お仕事は?」
「休みっス!一緒に出かけよっか?」
「…!うん!お兄ちゃんだいすきっ!」
「こら、その呼び方しちゃ駄目って言ったっスよー?」
私はこれからもずーっと、涼ちゃんと一緒にいて、大きくなったら結婚するの!
いつか、それが叶ったらいいなあ。
「私には金髪でモデルの天才バスケプレイヤーの恋人がいます」
(おにいちゃんって存在の、ね。)