黒バス
□目合は喧騒の中で
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今日も教室はざわついている。
俺の机に群がる女子達。
甲高い声で俺に媚びうる女子に、俺は無理矢理口角を上げる。
さらに高い声が教室内に響き、さらに脳内へと響く。
笑顔が崩れてしまいそうなほど耳障りだ。
そんな辛い時間も数分。
その時間の終わりを告げるチャイムが鳴り、
今度は別の意味で辛い、まるでお経を唱えているような授業が始まる。
聞いてもどうせ分からないし、寝てしまおうか。
そう思って机に突っ伏したと同時に、ふと見えた横顔。
「(……あ、今欠伸した。)」
くすりと微笑むと、その視線に気付いたのかばっと目を逸らした。
それがあまりに可愛らしいものだから、俺も思わず、視線を机へと戻した。
「(…そんなに可愛い表情見せちゃって…)」
他の奴に気付かれても知らないっスよ?なんて心の中で呟いても彼女に届く筈もなく。
騒がしいけれど休み時間よりずっとマシな時間が流れるのを感じながら、小さく目を瞑った。
起きる頃にはお腹がすいているだろうな、なんて考えながら。
授業が終わりチャイムが鳴ったのが聞こえて、寝ぼけ眼でうっすら目を開いた。
バシッと激しい音が聞こえて後ろを向くと、それなりに仲のいいクラスメイトが弁当を持ってきていた。
小さく返事をして欠伸をしながら同じように弁当を広げると、
向こうで彼女も同じように弁当を広げていた。
「(……おそろい)」
「なーに笑ってんだよ黄瀬?」
「別にー?」
友達の方を向くと見せかけて、その奥に見える彼女の方を見る。
ちょうど彼女の友達はお弁当を広げているようで彼女の表情がよく見える。
騒がしい教室の中で一瞬音がなくなったように感じて自然と顔が綻ぶと、
彼女は俺に気付くときゅっと目と瞑ってから、小さく微笑んだ。