黒バス

□はぐれ新人類
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たとえば、それは真ちゃんみたいな。

何かに特化していて、他の者より秀でているから周囲から浮く、とか。


たとえば、これまた真ちゃんみたいな。

周囲とは違う、強烈な個性を持っているから他人に距離を置かれている、とか。



そんな人間が、世の中には意外といるものだなと思った。






はぐれ新人類





「名無さーん」

「んー?」

「さっきの数学、ノートとってたー?」

「んー」

「ちょっと貸してくんねー?」

「んー」


あまりに生返事でちゃんと聞いてるのかと問いたくなったが、鞄を探っているのをみて飲み込んだ。
鞄から表紙に数学と書かれたノートを取り出しパラパラと確認したかと思うと、一瞬固まった。


「…どした?もしかして書いてなかった?」

「……今度でもいい?」

「いやー出来たら今日がいいなー」

「…そうだよね」


そっか…と小さく呟いたかと思うと、残念そうな顔をする。

なるほど、ノートにらくがきしてたんだな。

授業中にも関わらずあまりにも超大作が描けた!とかよくあるよなー
記念に置いておくとか、写真を撮るとかして残したり?あ、でも名無さん携帯持ってなかったっけ。
前メアド聞いたら持ってないって断られたし。

でもそれなら尚更だよなー。
オレもこの前真ちゃんの顔したバスケットボール描いたら思いのほかうまくいって超テンション上がったもん。
授業終わりに真ちゃんに見せたら消すのだよ!って怒られたけど。
あー思い出しただけでも腹いてー

じゃなかった。


「あー…らくがきなら気にしなくてもいいよ?」

「私が気にする」

「……それもそうか」


んー…と指を顎に当てて唸ってみると決心したように消しゴムをかけだした。
あー勿体無い。ゴッホもビックリ超大作だったかもしれないのに。
って言ったらそれはないと否定される。そりゃそうだ。


「次は見せられるような絵にしておいてねー」

「…気をつけます」

「んじゃ、昼休み終わったら返すわ。」


ひらひらと手を振りながら去ろうとすると、あの、と呼び止められる。
どうしたのと聞いてみれば言いにくそうにこう答えた。


「…お名前教えていただいてもよろしいでしょうか」

「へっ?!」


あれ?それなりに気さくに話してくれたからてっきり名前と顔くらいは憶えてくれてるのかと思ってたけど…
ん?名無さんって人見知りって聞いてたんだけど、あれ?


「私なんかに話しかけるからてっきり友達かと…えーっと、鈴木くん?田中くん?」

「………高尾です。」


わー、まさか初対面も同然と思われてたなんてビックリ。
結構最近話しかけてたしそれなりの仲にはなってたと思ってたんだけどなー、


「高尾、何くんですか?」

「和成クンです。」

「……あっなのだよと同列の語尾の人?」

「……え?」

「あ、えーっと、緑…緑間くんの。」

「………あー、うん?」

「わかったリヤカー引いてる人だ!」

「…………うん」


これはさすがにショック。まさかそんな変なイメージしかないなんて。
後で緑間のラッキーアイテム隠してやろ。見つかるだろうけど。
もしくはバスケットボールに真ちゃん顔かいて嫌がらせしてやる。


「分かりました。リヤカーなのだよ高尾くんですね」

「あーウン。間違ってはない…かな?」


あーこんなつもりじゃなかったのに!
落とし物したら拾ってあげたり代わりにプリント集めてあげたり休んでた時の分のノートこっちから貸してあげたりとか
物凄く爽やかなことしか彼女とはしてなかったのに!

くそ、今日こそジャンケン勝ってやる。


「…変な人だね、高尾くん」

「……キミタチに言われたくねー」

「君達?」


まあでも、こんなに楽しそうにオレに笑いかける彼女を見れたから、
ラッキーアイテムを隠すのは遠慮してやろう。




(でもそんな彼女らだから、オレは目が離せないのです。)






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