稲妻GO

□欲しいのはひとつだけ
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雷門中学校に通う中学二年生な私。
今日はそんな雷門中が特に賑わう日なのです。

『こ、今年こそ先輩にチョコレートを……!』

そう、今日はバレンタインデー。
女子が男子に発狂する日とも言う。
特にサッカー部なんて注目の的。

(名前は忘れたけど)ふにゃふにゃしたキャプテンとか、
ピンクの人とか、去年もたくさん貰ってた気がする。
………でも!

そんなファンには屈しない…!
今年こそ私は、南沢先輩にチョコレートを……!


「邪魔」

『あっ、ごめんなさい!』


………って、


『南沢先輩!待ってください!私貴方に渡したいものが…うわっ!?』

そこに突如現れる女子の大群。
何事かと思うけどすぐにその疑問は解決される

「南沢せんぱーい!チョコ貰ってくださーい!」
「篤志くーん!!」

『…………』

そうか、つまり私は南沢先輩が女子から逃げる邪魔になってしまったんだな……
まことに申し訳ない。

『でも私だって負けてられない!何故なら私も乙女だから!』

そうは言うものの、真面目な南沢先輩も
今日だけはどうやら授業でさえサボっているようで


『………みつからない』

このままじゃチョコレートを渡すどころか、
南沢先輩の顔を見ることさえ出来ない。
このままじゃ不味い!

校門で待ち伏せする案が出たものの、
もしかしたら裏門から帰るかもしれない。
でも裏門で待ち伏せしてたら表門から……もう!!

「知ってる?南沢くんの噂」

『!!』

南沢先輩の……噂とな!?
それは聞きたい!
……まあ、聞いている暇は無いけど
も、もしかしたらその噂は南沢先輩の居場所に繋がるかもしれないし!


「なになに?」
「南沢くんって本命以外から貰うつもり無いらしいよ?」
「あー確かにそれっぽーい」
「今追いかけてる人達可哀相だよねー」
「お粗末さまですな」


『………ほん、めい…』


………そうか。

私がどんなに南沢先輩にチョコを渡したくても、
南沢先輩にとっては迷惑かもしれないんだよね……

それなら、去年と同じくゴミ箱に捨てた方が


「何やってんだよおまえは」

『!! み、みみみ南沢先輩!?』


どうしてここにというか、その袋はやはりチョコレートというやつでは……


「ちょっとそこ退いて」

『え、あ、ごめんなさ……』


ボスンと音を立ててその袋をゴミ箱に入れる。
はみ出ている部分は足で無理矢理ねじ込んでいる。
……恐らく、下駄箱に入ってた分だろう。
よくこれだけ入ったもんだ


「それで?」

『は、はい?』

「オレに用があったんじゃないのか」

『……用?』

「朝、話しかけてきてただろ、俺に」

『…………』


まさか、憶えていてくれてたなんて、思いもしなかった。
というかあんなたくさんの人の中、
私の声を良く聞き取れたものだ


『い、いや、用は済んだので……気にしないで下さい!』

「……用は済んだ?……他の誰かにあげたってことか?」

『えっ?』

「今日渡したい物なんてひとつしかないだろ」


た、確かにそれはそうなんだけれども……!
私には今朝の勢いは無くなってしまったと言うかですね…!


「鞄から見えてる」

『えっ?嘘、ちゃんと直したのに……あ』


しまった、嵌められた!
ニヤニヤしてる南沢先輩、かっこいいよくそう


「ほら」

『は、はい?』




「貰ってやるから、寄越せ」

『…………!!』


それは、期待しても良いということなのでしょうか。
そうなんですか南沢先輩!!


『あああありがとうございます!』

「……はいはい」





欲しいのはひとつだけ

(……また捨てようとしやがって)







***

生徒Bはきっと俺
クーデレな南沢先輩


20110917

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