童話小説
□桃太郎
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「あー……かったりぃ」
頭をがりがり掻きながら道を行く少年の姿があった。
ポカポカととても暖かく気持ちのよい天気で、野に咲く草花が穏やかに風に揺れている。
そんないい日だというのに、少年はいかにも憂鬱そうな表情だ。
「ったく、なんで俺が鬼退治なんてやらなきゃならないんだ」
これで何度目かわからない独り言を溜息まじりに呟きながら、彼は自分の運命を軽く呪いたい気分にかられていた。
鳥達が青い空をどこまでも高く飛んでいく。
そんなのどかな風景も、今の彼にとっては疎ましいものでしかない。
この、なんともやる気のない様子の少年。
名を、桃太郎という。