童話小説
□白雪姫
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遠い遠い世界の、とある国に一人の美しいお姫様がおりました。
艶やかな黒髪と雪のように白い肌をしたそのお姫様は、白雪姫という名前でした。
とてもダイレクトな名前でしたが、本人は気にしていませんでした。
「今日はとてもいいお天気ですわ。たまにはお出かけするのも悪くありませんわね」
嬉しそうに独り言を言いながら白雪姫は森のすぐそばにあるお花畑を散歩していました。
ただしお供は連れていません、不用心にもほどがあります。
白雪姫が色とりどりの綺麗な花に見とれながら歩いていると、そこで不可解な光景を見てしまいました。
「――あら?」
なんと、お花畑のど真ん中で人が倒れていたのです。
「まぁ……! 大変ですわ!!」
白雪姫は慌ててその人に近付きました。
倒れていたのは若い男の人です。
どうやら気を失っているらしく、小さな声で苦しそうに呻いています。
「こんな所でお昼寝をしていたら風邪を引いてしまいますわ!」
いえいえ、どう考えてもこれはお昼寝しているのではありません。
けれど白雪姫は勝手に変な勘違いをしていました。
白雪姫は天然ボケだったのです。