童話小説

□白雪姫
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 倒れていた男の人がお昼寝しているものだと勘違いした白雪姫は焦っていました。

「いくらいいお天気だと言っても、このままの格好で寝ていては身体が冷えてしまいますわ」

 そして白雪姫は辺りを見回します。

「この辺りで羽布団のセールはやっていないのでしょうか?」

 と、ちょっぴり変な発言をしましたが、残念ながらそんなに都合の良い展開にはなりません。
 お伽話の世界観が壊れてしまいます。

「う、うぅ……」

「!」

 どうやら白雪姫の気配を感じて男の人が目を覚ましたようです。

「こ、ここは?」

「目が覚めましたか?」

 白雪姫はにっこりと微笑みました。

「あぁ、腹が減った」

「え?」

「ここ数日、なにも食べていないんだ……」

 どうやら彼はお腹が空いて倒れていたようです。
 やはりお昼寝していた訳ではありませんでしたね。

「それでしたら、わたくしのお弁当を分けて差し上げますわ」

「おお、良いのか?」

「はい。一緒に食べましょう」

 そう言って白雪姫はどこからか大きなバスケットを取り出しました。
 中にはサンドイッチやサラダ、それにデザートのシュークリームが入っています。

 美味しそうなお弁当に男の人は目を輝かせました。

「い……いただきま〜す!」

 二人は仲良くお弁当を食べ始めました。

「もぐもぐムグムグ……。うん、うまい! 最高だぜ!」

「まぁ、それは良かった。わたくし、今まで料理を作っても食べてくださる人が誰もいなくて」

 自分の作った料理を初めてほめてもらえて、白雪姫はとても喜びました。



 お弁当を食べながら、二人はお話しをしました。

「どうして何日もお食事をとらなかったのですか?」

「いやぁ……実は旅の途中で路銀が底をついちまって」

「まぁ、そうだったのですか」

 どうやら彼はパンを買うお金すら持っていなかったようです。
 白雪姫はどうにかこの人を助けてあげたいと考えました。

「そうだわ、これを……」

 白雪姫は自分の髪に付けている、小さな宝石で出来た花の形の髪飾りを渡しました。

「この髪飾りを売ってお金にしてください」

「な、なに言ってるんだ……!」

 慌てる男の人に、白雪姫は花のように微笑みました。

「わたくしのお弁当を美味しく食べてくれたお礼ですわ」

 そう言いながら、白雪姫は男の人に髪飾りをそっと握らせました。
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