砂糖菓子の恋人たち

□熱を秘めた心はあるかい?
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『ぁ…かし……くん、みんなは…?』


「買い出し中だ」


『買い出し…?』



頭がうまく回らないのか、
眠たそうに彼女は話す。



「安心して寝ていろ」



瞼に、光を遮るように手をおくと
寝息が聞こえた。
…はやいな。



「……藍里」



こっそり、名前を呼んでみる。
起きてたら、いつもみたいなおもしろい反応をくれるのだろう。



私室も特に飾り気はない。
あるとしたら、あの存在感のある不気味な人形くらいだろう。



少し赤っぽい毛並みのテディベアだが、
左目にはなぜか包帯がグルグル巻かれており、赤ずきんのように何かかぶっている。



以前、彼女がそこが可愛いのだといっていた。
趣味が悪いとしか言い様がないが。




『赤、司く…ん』



寝言なのか、起きているのか
微妙な声音は、俺の名を呼ぶ。



「……」



無言で、彼女の手を握りしめる。



その手はすごく熱くて、
自分の手がとても冷たく感じた。



「薬買ってきたっス!」



ばーんと控えめに(本人曰く)ドアをあけた黄瀬が入ってくる。



「水はあるか?」


「黒子っちがくんできてるっス
 あっ、あと緑間っちがとある事情で帰ったっす」


「とある事情だと?」



聞き返すと、内容までは知らないという黄瀬。
使えない奴だ。



「黄瀬君、どいてください」



黄瀬の後ろに、気がつくと黒子の姿があった。





ー熱を秘めた心はあるかい?ー


(あけない夜に)





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