砂糖菓子の恋人たち

□君と正面から
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冷たい風が、頬を斬るように吹く。
すでに指には感覚がなくて、手袋をしてくればよかったと思った。
白いマフラーに顔を埋めて、彼を待っていた。



この時間なら、確実にあえると信じていた。



冬がやってきたのだと思う。
短くせき込むと、手に息を吹きかけた。
電柱によりかかって空を見上げると、重たい雲が広がっていた。



ざりっ、とコンクリートと石がこすれる音がした。



「藍里…?」


『征十郎くん…!』



僅かに微笑むと、彼は眉を潜めた。
近寄ってきて、私の手にふれた。



「何をやっているんだ」


『征十郎くんと、話がしたかった』



彼が怒っている。
そうわかったのに、自分でも驚くほど真面目な声がでた。



短く、ため息をつかれて
歩きながら話そうと言われた。



「これを使え」


『えっ…、でも』



渡されたのは、手袋だった。
もちろん彼が今までつけていた。



一睨みされて、渋々つけると
やはりそれは男の子の物で、とても大きかった。



だけれど、とても暖かい。



『征十郎くん』


「何だ?」


『一つだけ、聞かせて』



まるで自分のじゃないみたいに、
口から言葉が勝手に紡がれる。



『チームメイトは、好き?』


「勝つ努力を怠らない奴ならな」



冷酷に紡がれる言葉は、揺るぎないもので。



『そっか、……征十郎くんらしいね』



そう笑うしかなかった。





ー君と正面からー


(進む君に対して、歩みを止めてしまったのは)





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