隔離部屋

□Ib 裏END 逃避
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「……ねぇ、イヴ。あの部屋で見つけたカギ持ってる?」
「う、うん。持ってるよ」


今までのはしゃぎようが嘘のように落ち着いた声でメアリーがイヴに聞く。
大人組と分断されたため少し呆然としていたイヴが少し慌てたようにポケットから鍵を取り出す。
イヴの手のひらに乗せられた鍵をメアリーがひょい、と持ち上げ笑った。


「これ使ってさ、……あそこのドア開けられないかな?」
「なにいってるのよメアリー! 危ないことがあったらどうするの?!」


あそこ、といったときにメアリーは右手側にあるドアをみた。
ぎょっとしたようにギャリーが叫ぶ。
だがそんな声にもメアリーは動じなかった。
ちらりとメアリーは名前に目を向ける。茨によって若干見にくくなっているが、名前もメアリーを心配そうに見つめていた。
どうやらギャリーと同じ意見らしく、イヴとメアリーだけで行くのは反対らしい。



「……でもメアリー、危ないよ」
「でもこのままじゃなんにもならないよ。石だから素手じゃこわすこともできないし」


正論だった。
あまりにその通りすぎてギャリーたちはなにも言えなくなった。
その隙をつくようにメアリーはドアに走っていった。
無論、イヴの手を掴んで。
引っ張られたイヴは思わずメアリーと一緒に走ってしまった。


「あ、ちょ、メアリー?!」
「それ壊す道具探してくるだけだからだいじょーぶー!」
「ギャリー、名前。安心して。……ちゃんともどってくるから」

我に返ったギャリーが叫ぶがもう遅い。まるでイタズラが成功したようにメアリーは笑った。
安心させるようにイヴも言う。



「あ、もう!
何かあったらすぐ戻ってくるのよ!」
「はーい!」


走りだしてしまった二人を止めることはできない。
だからギャリーは咄嗟にそう叫んだ。
ギャリーの言葉にこの上ないいい子の返事をして、メアリーたちはドアの向こうに消えていった。


「………ホントに大丈夫かしら。心配だわ」
「……同感」


額にてをあて、うなだれるようにギャリーが言うと、名前も同意し、ため息をついた。






結局この二人、いや、イヴを入れれば三人か。
この三人はメアリーの変容に気づくことはなかった。

そう。まるでマネキンのように無機質に変わってしまったメアリーの眼に、気づけなかった。
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