隔離部屋

□逃げられない
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「そうか。じゃあそうするかの」
「え? ってわぁ!?」



 ぐい、といきなり体を持ち上げられた名前が驚きの声をあげる。そのまま後ろに引かれた。ひくり、と名前の顔がこわばる。



「弐大サン、弐大サン、これはいったいどういうことでしょうか?」
「名前のみの特別メニューをしてやろうということじゃ。痛くなく、しんどくなく、つまらなくもなければいいんじゃろう?」
「だからってこの体勢は……いや、もういいや。なんでもない」



 名前は今、胡坐を掻いた弐大の足の間に入っている状態だった。弐大の体が背もたれになっている。今までもマッサージの時に散々体を触られたがそれはそれ。医者に羞恥を感じることはないのと同じだ。だかさすがにこの体制は恥ずかしかった。まるで恋人同士がいちゃついてるみたいじゃないか。でも弐大の腕は確かだ。羞恥を飲み込み、弐大に体を預ける。その際弐大の体が緊張が走るように固く力が入れられたのに名前は気づかなかった。



 するりと弐大の腕が名前の体に回される。弐大の体でできた檻の中に閉じ込められたみたいだと名前は思った。弐大の掌が腹を指圧しながら上に上がる。その様子をボーっとしながら眺めていた名前だったが弐大の手がそこに触れた時、ぎょっとして弐大を振り返った。すぐそこに弐大の顔がある。



「に、弐大? ちょ、これは……」
「どうした? なにか問題でもあったか? ワシはただ名前の体のことを思ってマッサージしておるだけじゃぞ?」
「っそ、うだよね……。っ……」



びくりと名前の体がはねる。弐大の両手は名前の両乳房をしっかりとつかみ、もみほぐしていた。シャレにならないと弐大を振り返ったが、いつもと変わらぬ弐大の様子にこうして考えてしまう自分がおかしいのかもしれないと考え始める。今まで弐大にしてもらったマッサージはどれも効果覿面だった。マッサージを受けている人が勘違いされるような声や表現をすることもよくあることだ。ここは弐大を信じて体を預けるしかない。名前は反射的に力が入りそうな体をなだめ、弐大の胸にもたれかかった。




「……っ……は、ぁ」
「…………」



 今まで何度もマッサージを受けた際、薄着の方がマッサージを受けやすいと気づいたのはいつだったか。あとブラジャーをつけたままマッサージを受けると肩ひもやブラジャーの下に入っている針金などの金属部分が体に押し付けられ痛みを生じさせることにも気づいた。そのため名前はいつしか弐大のマッサージを受けに行く時にはタンクトップ型のブラットップ一枚とゴム製のゆるいハーフパンツ、その上に薄手のパーカーという出で立ちに変わっていた。パーカーは外を出歩く際に上がタンクトップ一枚だとはしたないから着ているだけでマッサージを受けるときには脱いでいた。

 つまり何が言いたいのかと言うと名前は今、ブラトップとショーツ、ハーフパンツしか身にまとっていない状態で弐大の腕の中にいるということだ。さらに追加すると今名前は弐大に布一枚越しに胸をもまれているのだ。

いくらブラトップで隠されているとはいえ触られてしまえば丸わかりだった。名前の胸の飾りは固くなっており、弐大の手の動きに感じているのを示していた。

だが弐大はこれがマッサージの一環だと言っていた。それも名前の体の筋肉を楽につけるための特別な。弐大は自分のためを思ってこの行為をしてくれている。その行為に快楽を見出すだなんてと思うと名前は自分が浅ましくて仕方がなかった。

せめて、せめて弐大自身に感じていることがばれないようにと息を殺す。びくりと跳ねそうになる体もなんとか押さえつけた。声を上げないように注意して吐息だけをもらす。その吐息は震えており、どうしようもない快楽を必死に押さえつけていることを表していた。
 
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