隔離部屋
□逃げられない
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弐大猫丸相手
超高校級の手芸部員
「あー、そこそこ、そこにあるコリがきっついのよ」
「たしかにかなり固くなっておるのぉ」
あくる日、名前は弐大の部屋にいて、マッサージを受けていた。超高校級の手芸部員である名前はその名の通りよく手芸をしている。手芸と言うのは得てして肩がこるものばかりだ。下を向き、腕や手以外は動かさない。そのため万年肩こりを患っていた。
しかし超高校級のマネージャーである弐大にかかればその肩こりもほぐすことができた。……ほぐしてもほぐしてもしばらくしたら肩こりを再発することを除けば完璧と言えるだろう。
「お前さんも懲りんなぁ。まーたこんなに肩こりをひどくさせて」
「あんたがいるここならいくら肩こっても趣味に打ち込めるじゃない?」
だから弐大がいるからいいかなーって思ってさ
そう言いつつ忍び笑いをするような名前に弐大の手がピタリと止まる。後ろに目がない名前にはその時弐大がどんな目をしていたのか知る由もなかった。
いきなり動きが止まった弐大に名前が呼びかける。どったの? 後ろにいる弐大を振りかえるように首をひねった。
「名前……いくらコリをほぐしてもまた肩こりが再発するのは必要最低限の筋肉すらついてないからじゃ。これを機に少し体を鍛えてみんか?」
「えー、やだよ。しんどいし、つまんないし、痛いし」
運動嫌いなんだよね。
そう笑った名前に弐大は止まっていたマッサージの手を再開させる。そのまま黙っていた弐大がおもむろに口を開いた。
「ならばその条件を満たせば筋肉をつけさせてもいいんじゃな?」
「ははっ。そうだね。しんどくなくて、痛くなくて、つまんなくないようなやり方があるならね」
名前にとってはそれはいつもの軽口にすぎなかった。しかし弐大にとっては違った。その言葉を待っていたのだ。名前の見えない背後でニィ、と飢えた獣のように笑い、舌舐めずりする弐大に名前は気づかない。