隔離部屋

□傷物にした理由
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なんで主はあんなに綺麗なんだろう。戦がない時代からやってきたからだろうか。その綺麗さが憎らしかった。自分には消せない刻印があって、それのせいで主人を転々とさせられ、死ぬこともできずにずっと生きてきたのに。そんな傷、主にはないんだろう。



ああ、腹立たしくて仕方がない。腹の底から湧き出る水のように不快な気持ちが湧き上がる。どうしてそんな風に笑えるんですか。僕は今も苦しんでいるというのに。


主も自分と同じ立場に堕ちてくれば、そんな気持ちもなくなるだろうか。




ぴりっ、とした痛みで名前は目が覚めた。いきなり覚醒を促され、すこし朦朧とした頭でぼんやり考える。紙で指を切ったような、ちりちりした痛み。分析しているとまた痛みが走った。原因を取り除こうと痛みの走る左胸の上を払おうとしたら、何かに腕を掴まれ、払うことが出来なくなった。


まるで人の手に掴まれているようだ、とまで考え、かっ! と無理矢理目を見開いた。暗闇の中に辛うじて人のシルエットが見える



「そうざ……? あんた、なにして」


「ああ、起きてしまったんですね。まだ、完成はしていないのですが」


「は? いつっ」



ちり、とまた胸が痛む。痛む場所を見てみると、宗三の指が名前の皮膚を引っ掻いていた。寝間着がこの上なく肌蹴ている。辛うじて下ばきは隠れているが、胸や腹は丸出しだ。さぁ、と名前の顔色が悪くなった。身じろいで逃げようとするが、上にいる宗三を押し退けることは勿論、掴まれた腕を振り払うことすらできなかった。
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