短いお話(かいたもの
□分かっているから
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ジェラエル
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もう二度と迷わぬように、
もう二度とはぐれぬように、
もう二度と
一人にしないように、
そう、お姫様と王子様は約束をした。
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「ふぅ・・・」
エルザは自室で息を吐いた。
先ほどまで読んでいた本は可憐な姫と王子の話。
一度離れ離れになった二人は、もう二度と離れぬようにとお互いに、かわいらしいぬいぐるみを送るのだ。
「・・・私にはしょうしょう甘い話だな」
本の表紙を見つめ秘かに笑う。
「私はこんなに可愛くもないからな・・」
物語の女の子はどちらかというと、ルーシィのような誰からも好かれるであろうタイプだった。
人一倍、苦しみ、悲しみを背負うエルザには物語のヒロインは合ってはいなかった。
その時だった、いきなり自室の窓が開いたのだ。
「だれだっっ!!」
しかし、目を向けた先に居たのは一匹の鳩。
「・・・・こいつは・・・」
よく見ると背中には何やら本をしょっている。
「・・・・これは・・・・・・・」
表紙を見たエルザは、鳩から本を受け取り、ページをめくった。
「ある日、女の子は言いました。いつか、自由になれるかなぁ、と。それに男の子は答えました。あぁ、自由になれるさ、と。」
孤児院に居た二人は大の仲良しだった。
しかし、ちょっとした事件から、離れ離れになってしまいます。
数年後、男の子は悪の道に染まりかけ、沢山の人を傷つけていました。
そんな時、二人は再会してしまいます。
過去の自分を知る者は消さないといけない、
男の子は女の子をあやめようとします。
だけども、沢山の人々を傷つけた罰で男の子は記憶を失います。神が罰をあたえたのです。
それからまた数年後、二人はまた再会します。
彼の記憶は戻っていて、やさしい彼に心も戻っていたのです。
だけど、人々を傷つけた罪は重い。
彼と彼女はなかなか合う事はできません。
だけど、心の中では分かっています。
お互いに、愛しているという事を。
読み終えるとエルザの頬を温かいシズクが流れ落ちていた。
「・・・・ばかジェラ―ル・・・」
そんなこと、分かってる。
ジェラ―ルが愛してくれている事なんて。
「私も、愛してる」
もういなくなった鳩。
窓辺におかれた綺麗な羽。
薄暗くなってきた夕焼けに、
何度もつぶやいた。