短いお話(かいたもの

□分かっているから
1ページ/1ページ

ジェラエル
---------------------------------------


もう二度と迷わぬように、


もう二度とはぐれぬように、


もう二度と



一人にしないように、


そう、お姫様と王子様は約束をした。

--------------------------------------------------------------------------------


「ふぅ・・・」

エルザは自室で息を吐いた。

先ほどまで読んでいた本は可憐な姫と王子の話。

一度離れ離れになった二人は、もう二度と離れぬようにとお互いに、かわいらしいぬいぐるみを送るのだ。


「・・・私にはしょうしょう甘い話だな」

本の表紙を見つめ秘かに笑う。

「私はこんなに可愛くもないからな・・」

物語の女の子はどちらかというと、ルーシィのような誰からも好かれるであろうタイプだった。

人一倍、苦しみ、悲しみを背負うエルザには物語のヒロインは合ってはいなかった。


その時だった、いきなり自室の窓が開いたのだ。

「だれだっっ!!」

しかし、目を向けた先に居たのは一匹の鳩。

「・・・・こいつは・・・」

よく見ると背中には何やら本をしょっている。

「・・・・これは・・・・・・・」


表紙を見たエルザは、鳩から本を受け取り、ページをめくった。


「ある日、女の子は言いました。いつか、自由になれるかなぁ、と。それに男の子は答えました。あぁ、自由になれるさ、と。」

孤児院に居た二人は大の仲良しだった。
しかし、ちょっとした事件から、離れ離れになってしまいます。

数年後、男の子は悪の道に染まりかけ、沢山の人を傷つけていました。

そんな時、二人は再会してしまいます。

過去の自分を知る者は消さないといけない、
男の子は女の子をあやめようとします。

だけども、沢山の人々を傷つけた罰で男の子は記憶を失います。神が罰をあたえたのです。

それからまた数年後、二人はまた再会します。

彼の記憶は戻っていて、やさしい彼に心も戻っていたのです。


だけど、人々を傷つけた罪は重い。

彼と彼女はなかなか合う事はできません。

だけど、心の中では分かっています。

お互いに、愛しているという事を。


読み終えるとエルザの頬を温かいシズクが流れ落ちていた。

「・・・・ばかジェラ―ル・・・」

そんなこと、分かってる。

ジェラ―ルが愛してくれている事なんて。


「私も、愛してる」


もういなくなった鳩。

窓辺におかれた綺麗な羽。

薄暗くなってきた夕焼けに、

何度もつぶやいた。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ