グリラン小説
□深紅
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海に行こう!と提案したのは、馬鹿兄弟のリンだった。
猛烈に反対したのに、なぜか俺の意見は無視されてこうして海を訪れている。
「なんでお前も来てるんだ・・・。」
うすうす感づいてはいた。きっとあの馬鹿兄弟ならやりかねないと思っていたから。
「リン様が、くるように・と。」
隣に座って、はしゃぐリンを眺めているのはランファンだ。
ランファンは、彼女の両親が亡くなってから、友人だった俺たちの両親に引き取られた。
俺たちの両親は何を隠そう、国のトップを務める人物にあたる。
そんなこともあってか、ランファンは俺たちをリン様、グリード様とよび、敬語で話した。
もう一度ランファンをみる。
白い肌に深紅のビキニを着て、艶めく黒の髪はいつものように頭上で丸められている。
綺麗だ・と俺はおもう。
心臓がどきどきと音を立てているのが聞こえる。
それほどに、彼女は魅力的だ。
だからこそ。
海になんか来たくはなかった。
リンがランファンを誘うことは目に見えていた
のに。
隣に座るランファンは、そんな俺の胸中なんて知るはずもなく。