日雛小説
□素敵な夜を
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私はその時、きっと夢を見ているのだ・と思った。
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素敵な夜を
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「じゃあ、明日の夜また迎えに来るから。」
毎年、日番谷くんと花火を見にお祭りに行くのが私の中で恒例となっていた。
それは小さいころから、ずーっと変わらない。
去年も一昨年も、私が嫌がる日番谷くんを無理やりお祭りに連れて行ったということは今も記憶に新しい。
私が日番谷くんを迎えにいって、人ごみの中をはぐれないように手を引いて、綿あめを食べたり、かき氷をはんぶんこしたりして、最後はとっておきの場所で花火を見て・・・。
それがどうしたことだろう。
今年は日番谷くんが、お祭りに誘ってくれるなんて。
これは夢だ。
絶対夢に違いない。
だって、日番谷くんがお祭りに誘ってくれるなんてありえないもの。
きっと明日になったら私が日番谷くんを迎えに行って、手を引いてお祭りに行くんだ。
そして、次の日の夕方。
乱菊さんが豊満な胸を揺らしながら、私のところへやって来て。
「さ、雛森。準備するわよ。今日はとびきりセクシーに決めなきゃね。」
「ふぇ??」
何のことやら、わけもわからず茫然としていると、乱菊さんが妖艶な笑みを浮かべて言った。
「隊長とデートするんでしょ?」
「え!!?」
デートって!!?
今日のお祭りのこと!?
だってこれは毎年二人で行ってるし、ましてや私たちは恋人同士でもない、家族だし、そんなんじゃないことだって乱菊さんもわかっているはずでっ…!
突拍子もない乱菊さんのその言葉に動揺して、言いたいことが頭の中でこんがらがって、うまく声へと紡ぎだすことができない。
「デートなんかじゃ・・」
そこまで言って私の言葉は乱菊さんの言葉に打ち消されてしまう。
「雛森はデートじゃないって思ってるかもしれないけれど、隊長は違うわよ〜?」
「…え…?」
それって、どういう・・・?
「今年は、去年までとは違うってことよ。ほら、出来た!次はお化粧していくわね。」
そうして、暫しの沈黙。
「はい、完成!!鏡、みてごらん。」
「わ・・・。」