リンラン小説

□皇子は幸福な夢を胸に閉じ込めてわらう
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夢を叶えたとき
人はどんな気持ちになるのだろう。
嬉しくて
キラキラして
満ちたりた・・・
そんな気持ちだといい。

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「ランファンの、願い事はなに?」
「若が賢者の石を持ち帰り
皇帝になることです。」
「違う。もっと個人的な願いだよ。」
「・・・では、若を守れる強さを。」


熱のこもったまっすぐな言葉に
思わずため息をついた。
真面目すぎることが彼女の美点であり
欠点でもあった。

主の目を射貫くように見つめるその姿は
呆れるほどに真摯で。

「ランファン」

彼女、シン国の皇子、リン・ヤオに仕える
臣下の名前を呼んだ。

「俺の願いはいくつもあるけれど
民のためでもない
己のためだけの願いがある。
それは永遠に叶わないけれど
聞いてくれる?」

ひとつ深呼吸してからランファンを見る。
彼女の背に、ちょうど一番星が見えた。

「俺の願いは
ランファンを永遠にそばに置くことだよ。」

そういって笑うと
ランファンは少し驚いた表情をする。
そして、ふと微笑んで。

「ならば私は永遠に若の臣下として忠義を誓い
若の願いを叶えましょう。」

そのあと
「もっともっと、強くなります」と
自分に言い聞かせるように呟いた。


**************

「皇帝陛下、参りましょう。」


時は流れ、皇帝リン・ヤオの側近として
ランファンは毎日せわしない毎日を送っている。
今朝は朝から雨が降っていたが
この雨も来週には終わり
暑い日が続くらしい。
毎年この時期になると
かつての主の願いを思い出すのだった。

「ランファンを永遠にそばに置くこと」
が、願いだと言ったあの日。

私が「若を守れる強さ」
を望んだあの日。


門の外まで向かう長い階段で。
皇帝陛下のすぐ後ろを歩きながら
尋ねてみた。

「陛下、願いごとを、覚えておいでですか?」

「ああ、覚えているよ。
ランファンの願いは星に届いたか?」


問われた瞬間
自身の左腕の機械鎧を横目で見やる。
戦いの中でなくした左腕。
異国の技術で機械の腕を手に入れた。
生身だった時より幾分か強くなったのは事実だろう。

「望む形であったわけではないですが
少しは届いたように思います。」

「そうか。よかった。」


【陛下の願いは、届きましたか?】


尋ねようと少し顔を上げて、やめた。
願いが届いたにしては
あまりにも切ない顔をしている気がして。

私は毎日、こんなにも近くにいるのに。

あなたのそばに、ずっとずっといるのに。





長い階段が終わり
大きな扉が重たい音を立てて開く。

まだ雨の降り続ける
鼠色の空を見上げて祈った。



願いが届きますように。



**************


届かなかった願いがある。
君には到底言えない言葉だけれど。
そばにいればいるだけ、つらくて。

永遠にそばにいるけれど
永遠に遠く離れた存在。


願いを叶えたとき
人はどんな気持ちになるのだろう。
嬉しくて
キラキラして
満ちたりた・・・。

そしてそれは
きっと


俺が永遠に知りえない気持ちなのだろう。


**************

生涯、ランファンを愛していた。



一緒になることだけが


俺の



唯一の願いだった。





End 2018.07.07.








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