長編2
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休日のこと―…
ミナトは窓の隙間から微かに光が漏れるリビングへと向かっていた。
もうすぐ、夜が明ける。ただ、それだけで気分が沈みミナトはため息をついた。
「…辛気くさいですね、何なんですか全く…」
誰も居ないと思っていた暗いリビングに呆れるような、そんな声が響いた。
声と一緒響いたのは、―紅茶の香り。
「レイジお兄ちゃん?…もう部屋に戻ったと思ってた。」
「部屋に戻る前に紅茶と読書を。」
「ふふっ…いい時間過ごしてるんだね?」
「隣、いい?」と了承を得て、レイジの隣に腰を降ろす。
ミナトはレイジに話かけるでもなく、ただレイジの隣に座りカップから立ち上る紅茶の香りを楽しんでいた。
「…貴女、静かですね?つまらないと思わないのですか?」
瞳を閉じて、香りを楽しんでいたミナトに突然声をかけられ目をパチパチと瞬きする。
けれど、すぐにニッコリと笑顔を向けて答える。
「つまらないなんて…とんでもない。私、静かな空間が好きなの。あと、紅茶も本も好き。」
「ほう…下等な人間にしては素晴らしい考えを持っているようですね。…紅茶、飲みますか?」
ミナトの言葉が気に入ったのか、レイジは紅茶を勧める。
「うん、ありがとう」と返事をしたミナトの前に差し出されたのは薔薇と荊が印されたカップ。
「これ…マリアローデン?すごく綺麗…」
「マリアローデンを知っているとは…マイナーなブランドなんですがね」
カップを持ち上げ、香りを楽しむ。
一口飲むと、フワリと甘い味が口一杯に広がる。
「これ…薔薇の香り?でも味はジャスミンだよね?」
「よくお分かりで。その紅茶は私特製のブレンドティーです。美味しいでしょう?」
レイジの言葉に小さく頷き、カップの紅茶を飲み干す。
「ご馳走さまでした」とレイジに頭を下げ、小さく息を吐き出す。
…ミナトの顔は紅く染まっていた。
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