泥「だああああああああああああ!また失敗だ!うん…」
サソリの旦那が死んで早一ヶ月。
オイラは何か変だった。
集中できねぇし、やる気もでねぇ。
しかも良い作品ができねぇ。
こんなんじゃ芸術家として失格だ…。
泥「旦那…オイラはどうしたらいいんだ?」
デイダラの孤独を包むように差し込む月明かり。
しかしそこに彼が求める温もりはない。
泥「逢いたいぞ、旦那ァ…」
目頭がジンと熱くなる。
あぁ、これは…涙か。
オイラもまだ泣けるんだな。
旦那が死んで、寂しくなんかないって思ってたけど、こうしてずっと一人だと、寂しさを感じる。
鳶「せんぱ〜い!!なーにしてるんですかァ?」
泥「うわ!トビか…うん…」
突然後ろからサソリの後釜であるトビが声をかけた。
鳶「あれェ?元気ないですねェ?」
泥「うるせェ。ほっとけ」
鳶「………。」
トビは一瞬黙る。
鳶「あ、もしかしてェ…サソリさんに会いたいとかァ?」
泥「…べつに、…」
トビは仮面の下でニヤニヤしてデイダラを見る。
泥「オイラは寂しくなんかない!造形の邪魔すんな!うん!」
鳶「ですよねェ!先輩が寂しいなんて言うわけないですよねェ!」
泥「………。」
鳶「寂しいって言ったら、サソリさんに会わせてあげようと思ったんですけどねェ〜」
泥「は!?何いってんだお前!サソリの旦那は死んだんだぞ?うん」
鳶「僕の術を使えば簡単に会えますよォ?」
泥「………フン。信用ならねェな!」
鳶「先輩酷ーい!少しくらいは信用してくれても…」
泥「……面白ェ。信用はしねェけど、やってみろ」
トビの言ってることが本当かどうかはわからない。
けどオイラは旦那に会いてぇんだ。うん。だから、少しの期待に賭けてやる!
鳶「わ〜い!じゃあ、行きますよ〜?」
泥「………!?」
トビはどこからか取り出した水晶玉を宙に放つ。
デイダラは水晶玉を不思議そうに見つめた。
そして、月と水晶が重なった瞬間……
デイダラの姿が消えた。
鳶「…ククク。“限定月読”の練習台になってもらおう。」
トビの隣の床からゼツが姿を現した。
絶「えー。デイダラにまでかけちゃったのぉ?」
『先輩で遊ぶのも程々にしておけよ』
鳶「デイダラはサソリに会いたがってる。あのまま気が抜けっぱなしだったら殺されるぞ。」
限定月読とは、相手が術にかけられる瞬間に一番強く望んだものがある幻術世界に行くことができる術。
デイダラが望んだ世界とは……
泥「ん……」
ここは…どこだ?
『オイ、デイダラ…起きろ』
サソリの旦那の声…? オイラ、死んだのか?
蠍「起きろつってんだろ!?ソォラァ!!」
泥「ぎゃあああああ!ごめんよ旦那!痛っ!?」
起きないデイダラに痺れを切らしたサソリはデイダラをボコボコ殴る。
泥「痛ェ!…ってことは夢じゃねぇ!そして死んでねェ!!」
蠍「何いってんだ?殺すぞ?」
泥「旦那…ずっと会いたかったぞ、うん…」
暴れていたサソリは不思議そうな顔でデイダラに抱きしめられていた。
泥「…あれ?旦那?」
蠍「あ?」
デイダラはサソリの異変に気づく。
体が温かい。
それに…心地よい心音が聞こえる。
泥「球体関節じゃ、ない…」
傀儡のはずのサソリは傀儡ではなく、生身だった。
普通の人間と同じ、肉体。
蠍「何言ってんだお前。人形じゃねぇんだから球体関節なワケねぇだろ?それに会いたかったって何だよ。俺らはずっと一緒に居たじゃねぇかよ」
泥「………!?」
ここに居る旦那は…本物の旦那じゃねェ。
だけど、誰かの変化でもねぇ。
生身だけど、旦那は旦那だ。うん。
オレの…ずっと、会いたかった…旦那…
泥「好きだ、うん」
蠍「デイ…!?んっ…///」
デイダラはサソリに噛み付くようなキスをした。
激しく口内を犯し蠢く舌。
サソリは甘い声を漏らしながらも必死にそれに応える。
蠍「ん…デイダラァ…///」
泥「旦那……」
二人の唇は銀の糸を残し名残惜しそうに離れる。
サソリは物欲しそうな顔でデイダラを見上げた。
デイダラは生唾を飲んでから、サソリの服に手をかけた。
蠍「あ、ちょっと待っ……デイダラ!」
泥「悪ぃな旦那。オイラもう、我慢できそうにねェんだ、うん」
そう言ってサソリの首筋に噛み付いた。
生身のサソリの体には紅い華が咲く。
蠍「あっ……ふ…///」
泥「くっ……だ、んなァ…」
そして二人はそのまま夜が明けるまで幾度となく愛し合った。
行為後、サソリはデイダラに寄り添い腕枕で横になっていた。
行為後のこうした余韻を愉しむ事も愛し合うことのひとつ。
泥「旦那、好きだ。」
蠍「………。」
泥「旦那?」
蠍「すまねェ、デイダラ」
泥「………?」
蠍「オレもお前が好きだ、だからずっと一緒に居たい。でも…」
泥「………!」
デイダラの体から強い光が溢れる。
蠍「お前はこの世界の人間じゃねぇ、」
泥「っ!?旦那!?オイラは…旦那さえ居れば、何も…!」
蠍「……っ、元の世界に戻れ!」
泥「嫌だ!オイラには旦那が必要なんだ!旦那が居なきゃ…良い作品作れねぇんだ。それに、任務にも身が入らねェ…」
蠍「そっちの世界のオレは、もう死んだんだな…だから、お前…」
泥「だから!オイラはここで旦那と過ごしたい!旦那の居ない世界なんて…オイラはいらねぇ!!」
蠍「……デイダラ、先に逝っちまって悪ぃな」
泥「旦那ァ……」
蠍「お前は生きてる。だからもとの世界に還れ。」
泥「う……還りたくねぇ…旦那ァ…」
蠍「お前と芸術の流派は違うが…お前の芸術、嫌いじゃなかったぜ。もとの世界で、皆に芸術のすばらしさを見せてやれ」
泥「芸術も大事だけど、オイラは旦那も大事なんだ!」
蠍「……ありがとう。愛してくれてありがとな、デイダラ」
少しずつ光が強くなって、デイダラの体は透けていく。
泥「そ、そんな…!嫌だ!旦那ァ!」
蠍「愛してる。」
光に飲み込まれて遠のいていく意識の中悲しそうに微笑んだ旦那の顔が見えた。
あぁ、オイラはまた…孤独だ。
『デイダラ、起きろデイダラ』
あぁ、また旦那の声がする。
今度は夢か?
蠍「デイダラ……」
泥「…っ……!」
旦那が、オイラに触れた…? さっきのような生身の温もりは感じないけど、傀儡の冷たい感触がした……
泥「……旦那。」
…気がした。目を開けてもそこに旦那の姿はなかった。
泥「ちくしょートビの野郎…。余計に寂しくなっちまったぞ、うん…」
寂しさを紛らわせる為にベッドに入り眠りに付いた。
デイダラの寝息が聞こえてきた頃、彼の枕もとに一つの影。
蠍「デイダラ……」
少し透けた体のサソリがそこに居た。
霊体のサソリはデイダラの名を呟いて眠る彼の頭を撫でた。
泥「…ん、旦那……」
蠍「…寝言か……」
泥「スー…スー…」
蠍「寂しがるな、オレはいつもお前の側にいる。姿は見えないかもしれねぇけど、ずっと一緒だ」
サソリはデイダラの額にキスを落として夜の闇へと消えていった。
デイダラのベッドの隅にある小さな傀儡が倒れたのは誰も知らない……
Baby tell me what I've done
Tell me what I can dobaby
あの日からどれくらい時が経ったのだろう
残していったモノ見つめても何も変わらない
何故もっと早く気付けなかったんだろう?
気付いてたけど見えないふりしていたんだ
君に言った言葉が僕らを変えてしまうなんて分からなかった
君にしたことが悪かったと
今だから分かるんだ遅いけど
涙出ない程泣かせてごめんねtell me what can I do?
千切れてしまった絆戻せないでもまだ
can't let you go
一人のとき勇気くれたいつでも優しくしてくれたね
小さな僕の人生は君なしじゃ意味が無いから
I wish I had a chance
もう一度だけあの頃に戻れるなら何をしてもいい
戻れるなら何をしてもいい
君に言った言葉が僕らを変えてしまうなんて分からなかった
君にしたことが悪かったと今だから分かるんだ遅いけど
涙出ない程泣かせてごめんねtell me what can I do?
千切れてしまった絆戻せないでもまだ can't let you go
全て戻すため僕は尽くしたよでもやっと気付けた It's time to let it go oh yeah yeah
君に願うのは幸せだけだから後ろは見ない for you and me
君に言った言葉が僕らを変えてしまうなんて分からなかった
君にしたことが悪かったと今だから分かるんだ遅いけど
涙出ない程泣かせてごめんねtell me what can I do?
千切れてしまった絆戻せないでもまだ can't let you go
涙出ない程泣かせてごめんねbut you won't cry again
千切れてしまった絆戻せないけどI can let it go now
涙出ない程泣かせてごめんね千切れてしまった絆戻せない
J Soul Brothers/let it go
『S級犯罪者が精一杯の恋愛』の寧々ちゃんから
交互記念にいただきました☆
私のわがままでデイサソ文を書いていただいたのですが…
うわあぁぁぁぁぁん切な過ぎるよ(ノд<。)゜。
デイダラがもう可哀想で可哀想で…
ぼろ泣きしながら読んでたよ///
限定月読…大好きだよ(*/ω\*)
色々美味しいよね!
く…トビは確信犯か…!←
遠くにいるようで近くにいた…
まさにその通りだね!
この2人に幸あれ…!
寧々ちゃん!こんな素敵な文をありがとう!//
どうぞこれからも仲良くしてねー//