Poem

□泣く音に紛ふ浦波は
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空気中に蔓延する
飛沫の咆哮と其れが撒き散らす芳香は

この先に待ち受ける
厳しい未来を予見するかのように
二人の髪を梳る







もしも
生命の起源は海だと云う仮説が真実なら

貴方と私も
元々は一つだったのでしょうか?


産声を上げ生まれ落ちた瞬間から
遺伝子の隅のまた隅で
繋がって居たのでしょうか?


ならばきっと
今こうして結ばれる手と手も
偉大なる時間軸の中心で
“今”と云う時を刻み続けよう




この掌に風が吹き抜ける瞬間を
逃れられないものと知っているから

気付かぬふりをしたまま
微笑む“今”を閉じ込めて


この手が再び冷たくなる頃
思い出して初めて泣けるように







彼の高名な光る君が詠んだ
切なくも美しい歌のように

海原の咆哮はとかく
泣く音に紛う

潮の香りに誘われて
追憶の走馬灯に照らされる姿

泣かないで・・・

浦波に花束
君の額に、くちづけを。








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