Poem

□スカーレットの森
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幼い頃から禁忌だったその森へ
足を踏み入れたのは
君との約束を果たす為

大人に成りきれなかったふたりは
同じ場所を目指し
傷を舐め合いながら生きてきた







しんとした夜に包まれる花園
薄く浮かぶは青白いチューベローズ
手を伸ばしてその温度に触れて
愛でてください



楽園では最後の蕾が開き
蜜を求める蜂は盛んに
小さな鳥は力の限り啼く
朝の太陽が昇る前に
もう一度眠りに落ちるまで



真夜中に訪れる春に
ざわめく名も知らぬ森



そのまま私に手をかけて
テッセンの蔓で作った玩具の鎖で
鳥籠に入れて飼えば良い
囚われの姫君になりたいの


優しさと愛は似ているけど
取り違えちゃ駄目
優しさは愛には成り得ないのよ
この深紅の森では







さあさ こちらへ
誘ってあげる
茂みの奥のまた奥に
薫り高く蜜は甘い
眩暈がするほど紅い薔薇があるの



だけどまだ辿り着かないで
限界も最果ても近いようで遠いもの
まだ触れないで
花が熟すのはあと一秒先
焦らせば焦らすほど
その花弁は紅くなる

まだ愛さないで
私のこと
ずっと愛さないで
愛なんて無くて良いじゃない
人の夢は“儚い”と決まっている







貴方に鳥籠は小さすぎるから
銀の檻に銀の鎖
革の首輪で捕えてあげる
ケモノの本能は
私の掌の上



別れなんて刹那だから

この森でまた
出逢いましょう




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