short
□名前呼び
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「かがみん!」
「…その呼び方何とかならねぇのかよ…ですか」
さつきちゃんが呼んでいたこのニックネームは私には大好評だった。火神と呼んでいたあの頃が懐かしい。
その前はリコちゃんが呼んでいたバ火神だった気がする。
どちらにせよ、共通点があるのはおわかりいただけるだろうか?
私たち、付き合ってはいるのだが、名前呼びは未だしたことがない。かがみんも私を呼ぶときは「なぁ…」とか、「お前」とかばっかり。苗字でさえも呼んでくれない。
というか、かがみんから話しかけてくれることが少ない。私がペラペラ喋っているのがいけないのかもしれないけど、何となく寂しい。
かがみんは私のことが好きなのか、わからなくなってきている。
「……」
「で、どうしたんすか?」
「……」
正直敬語もやめて欲しい。いや、かがみんが使う敬語は敬語とは言えないのだが。無理に使おうとしてくれなくていい。
それで、年が離れてるのに、さらに距離を感じてしまうのを、彼は知らないのだろうか。
名前で呼んで欲しい。
手を繋ぐとか、キスをするとか、そういうのも嬉しいのだけど、その時でさえも名前を呼んでくれないのは如何なものか。
「?どうした?…ですか?」
顔を覗きこむかがみんは黙った私を心配してくれていた。ここでいっそ言ってしまったら、かがみんは私のことを名前で呼んでくれるんじゃないか。そう思った。
けど、言えないまま、私は作り笑顔で彼を迎えた。
「んーん、何でもない!行こうか!」
久々の、かがみんとの貴重な休日を壊したくはなかった。
ただの私の考えすぎかもしれない。名前を呼びたくても恥ずかしいのかもしれない。
そう、自分に言い聞かせておいた。