short

□名前呼び
1ページ/6ページ


「かがみん!」
「…その呼び方何とかならねぇのかよ…ですか」

さつきちゃんが呼んでいたこのニックネームは私には大好評だった。火神と呼んでいたあの頃が懐かしい。

その前はリコちゃんが呼んでいたバ火神だった気がする。

どちらにせよ、共通点があるのはおわかりいただけるだろうか?

私たち、付き合ってはいるのだが、名前呼びは未だしたことがない。かがみんも私を呼ぶときは「なぁ…」とか、「お前」とかばっかり。苗字でさえも呼んでくれない。

というか、かがみんから話しかけてくれることが少ない。私がペラペラ喋っているのがいけないのかもしれないけど、何となく寂しい。

かがみんは私のことが好きなのか、わからなくなってきている。

「……」
「で、どうしたんすか?」
「……」

正直敬語もやめて欲しい。いや、かがみんが使う敬語は敬語とは言えないのだが。無理に使おうとしてくれなくていい。

それで、年が離れてるのに、さらに距離を感じてしまうのを、彼は知らないのだろうか。

名前で呼んで欲しい。

手を繋ぐとか、キスをするとか、そういうのも嬉しいのだけど、その時でさえも名前を呼んでくれないのは如何なものか。

「?どうした?…ですか?」

顔を覗きこむかがみんは黙った私を心配してくれていた。ここでいっそ言ってしまったら、かがみんは私のことを名前で呼んでくれるんじゃないか。そう思った。

けど、言えないまま、私は作り笑顔で彼を迎えた。

「んーん、何でもない!行こうか!」

久々の、かがみんとの貴重な休日を壊したくはなかった。

ただの私の考えすぎかもしれない。名前を呼びたくても恥ずかしいのかもしれない。

そう、自分に言い聞かせておいた。



次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ