淡雪と月光

□参,入隊
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〜洸視点〜



大広間を出た後。


「改めて、自己紹介する。俺は新選組三番組組長の斎藤一だ。以後、宜しく頼む。」

『はい。今日から新選組三番組隊士となる獅子藤洸です。よろしくお願いします。』


歩きながら私達はこう自己紹介をしていた。
また、斎藤さんはある程度、屯所の中を案内してくれた。


そして、角部屋に着いた。襖を開けてみると、中は意外にも綺麗だった。


―こんないい部屋、使わせてもらっていいのかな。
そう、思ってしまうほど整っていた。


「今日からここがあんたの部屋だ。今日は夕餉の時間になったら呼びに来る故、それまで好きにしていて構わない。」

『はい、分かりました。』












とりあえず私は、あの二日間―斎藤さんに出会った日とその一週間前の日―に見たものについて考えてみた。


白髪の人達は…あれは噂で聞いた偽物の鬼を創るための実験台であることは確かだ。
今のところ、私が発見した全ての実験台達はその時にはもう血に狂っていた。
だから見つけ次第、その場で斬ってきた。


新選組の幹部達は私にあの実験台の正体を隠しておきたいみたいだけど…実験台の正体はまだ私にも分からない。一体、どういうものなのだろうか…


「ぉぃ…おい!!」

『へっ!?』


素っ頓狂な声を上げながらも、振り返ってみると、私に一番歳が近そうだ、とさっき思った幹部―藤堂さんが立っていた。


「夕餉の時間だから呼びに来たぜ。」

『えぇと…藤堂さんでしたっけ。』

「あぁ。とりあえず皆待ってるから行こうぜ。」




********************




廊下で歩いていると、藤堂さんが突然、


「俺さ、藤堂さんって呼ばれんの堅っ苦しくて嫌なんだよなー。お前、俺と歳近そうだし。」


と言ってきた。


『じゃあ、何と呼べばいいんですか?』

「平助でいいぜ、普通に呼び捨てで。」

『…俺、一応平隊士ですよ?』

「いいんだよ、別に!
つーか、おかしいな…洸はなんか役職就く、って聞いてたけど。」

『え…あ、もしかして着きました?』

「あ、あぁ本当だ。っていうか敬語もなし。」


話し込んでいる内にどうやら私達は大広間に着いてしまった。…ついでにさりげなく敬語も注意された。


「俺達が話し合って、洸は俺達幹部と飯食う、つーことになったんだよ。」


そう言って藤堂さん―じゃなくて平助が襖を開けると、
幹部はもう全員揃っていた。


「遅くなってわりぃ、土方さん。」

「あぁ、大丈夫だ。平助はいつもの所に座れ。獅子藤は…斎藤の隣だな。」


そう言われたので、私は斎藤さんの隣に座った。


「とりあえずこいつの自己紹介を再度しておこう。こいつは獅子藤洸。明後日より三番組に副組長として入隊させる。」

『えぇっ!?』


突然役職を発表され、私はすごく驚いてしまった。


『大丈夫なんですか?突然現れた…本当は女の俺が役職なんか就いて。』

「ああ。副組長の主な仕事は組長の補佐だ。まあ、詳しい事は後で斎藤に訊け。」

『分かりました。』

「トシ、いいか。」

「ああ。」

「じゃあ、夕餉を始める。」


そこまで近藤さんが言った所で斎藤さんが小声でしかも早口で、


「いいか、自分の食は自分で守れ。」


と言ってきた。


『え?あぁ、はい。』




―その後の食事は確かにおかずの奪い合いで、これはなにか対策を練らないと危険だな、と感じたのだった。




〜参,終〜
(2013,02,01)
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