淡雪と月光

□番外,もしものお正月〜2013版〜
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《斎藤君と獅子藤君へ


いつも二人共ご苦労。
元日にもかかわらず、巡察もきちんとこなす君達に感謝している。

そこでだ。俺から少しだが
初詣の時間をとった。
折角だから、獅子藤君は用意してある着物に着替えるといい。

斎藤君、君も初詣は行きたいだろう。初詣に行き終わるまでは、屯所に帰ってくるんじゃないぞ。


では、楽しんできてくれ。
近藤より》



いつも着替えに使う部屋に置いてあったのは、この手紙と女物の着物。



『つまり、初詣に行け、ってことですよね…?』

「そのようだな…。」


近藤さんからの気遣い。それはただ単に私達を初詣に行かせるだけじゃないと思った。

なかなか休もうとしない斎藤さん。行事、というのは斎藤さんを休ませるのにもってこいだ。
それに…


一月一日、つまり今日。
実は斎藤さんの誕生日。たぶん本人は忘れてると思うけど。
私が入隊したばかりの頃、近藤さんが私にこっそり教えてくれていた。


『行きましょうよ、初詣。』

…斎藤さんに休んでもらうためにも。


「ああ。折角局長が下さった機会だ。行こう。でもその前にその…着替えるのだろう?」


斎藤さんは即答した。そして大切なことを思い出させてくれた。
…着替え、忘れてた。

『あっ、はい。』


そのあと気を遣って、斎藤さんは部屋から出てくれた。





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





久しぶりに女物の着物を着たから、ちょっと手間取ってしまった。鏡を見ていないから似合ってるのかどうかさえ、分からない。


『斎藤さん、着替え終わりましたよ。』


私がそう呼ぶと、


「もう入っても大丈夫か?」


という声が。


『似合ってるかどうかは分かりませんけど…着替えは終わってるので、もう入っても大丈夫ですよ。どうぞ。』



カラカラとふすまが開き、斎藤さんが部屋へ入ってきた。と…
斎藤さんは何故かそのまま固まってしまった。


『…斎藤さん?』

「…」

『大丈夫ですか?』


返ってきたのは、


「あんた…獅子藤か?」


という、斎藤さんらしくない質問。


『そうですけど…どうしてそんな質問を?』

「その…確かに立っているのは獅子藤、あんただと分かっているのだが…」

『?』

「…いや、なんでもない。では行くぞ。」

『はい!』







〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




お昼が過ぎた頃。
私達はようやく神社へたどり着いた。けれどさほど混んでいるわけでもないので、あっという間に先頭に着いた。


礼儀作法を守っておまいりし、願い事を頭に思い浮かべる。


『(今年も新選組の全員が、元気に過ごせますように…)』

「(今年もまた、新選組が良い働きが出来るよう、皆健康でいさせて下さい…そして…)」

「『(来年もまた、こうして初詣に来られますように…)』」












――初詣の後。川沿いにて。

私は今日起きた時からしようと思っていた話をきりだした。


『斎藤さん、実はお渡ししたいものが…』

「なんだ?」

『とりあえず斎藤さん、今日、誕生日ですよね?』

「…」

『…もしかして、忘れてましたか?』

「…忘れていたのは、今年だけだ。」

『(小声で)やっぱり…。』

「で、渡したいものとは?」

『斎藤さん、誕生日おめでとうございます。いつも頑張って下さってる斎藤組長に…私からの贈り物です。』


私が斎藤さんに手渡したのは、いつも斎藤さんがしているものに似ている…はずの白色の襟巻き。もちろん新品。


『包装とか何もなくてすみません。』

「いや…ありがとう。あのな…」

『?、どうしたんですか?』

「##NAME3##。その服…似合っている。」


そう言って斎藤さんは微笑んだ。


『!!』


いつもあまり笑わない斎藤さんが笑ったせいで、私は真っ赤になってしまった。


「顔が赤いが、大丈夫か?」

『いえっ、大丈夫です!!そろそろ戻りますか、斎藤さん。』

「?…ああ、そうだな。」


斎藤さん、かなり怪しんでるけどこれはまだ平気だ。気付かれてない。








──“新選組”を大切に思う気持ちだけは一緒な斎藤と##NAME3##。




とりあえず、
今年も無事に過ごせますように─




〈終〉
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