淡雪と月光
□弐,問答と対戦
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――洸が新選組屯所に連れて来られた翌日。
大広間では幹部全員が勢揃いし、
“新撰組”隊士目撃者である洸の尋問を行おうとしていた。
「副長、連れて来ました」
斎藤がそう言って洸と一緒に大広間に入ると洸に幹部達の視線が集中した。また、それぞれが何か言っていた。
「てめぇら、静かにしろ。」
土方の一言で大広間がシン…となる。
「昨日は拘束したままで悪かったな」
『いえ、気にしないで下さい。見てはならないものを見てしまった俺を、拘束したままにしておくのは当然の事だと思いますから』
「これから俺達はお前に幾つか質問をする。すべて、真実を話せ」
『分かりました』
「まず、「君は何者?」おい、総司。お前なぁ…」
土方の言葉を遮って洸に質問したのは、沖田だった。
『俺は獅子藤 洸という者です。二週間ほど前に京にやって来ました。』
「女が一人で刀を持って、一体どんな目的があって京へ来た?」
と斎藤が問うと、
洸が答えるより前に、
「「「えっ、女(の子)?」」」
と、ほぼ全員が口をそろえていた。
『よく分かりましたね。ばれないと思ったのに』
その反応に洸は苦笑いしながら答える。
「あんたを見つけた時、そう思った。確信したのはつい先ほどだがな」
「だったらますます謎だぜ。あいつら二人も斬っちまうし」
新八がそう言うと洸は、
『強さに関しては修行していたからだと思います』
とだけ簡潔に答えた。
「改めて聞くが、京へ来た理由はなんだ?」
『理由は…逃げているんです』
“逃げている”と聞いた瞬間、幹部達の目が少し鋭くなった。
「逃亡?」
『ええ。私は今まで江戸に住んでいたのですが、家族は私以外全員殺されてしまいました。…私もいつ追っ手に追いつかれるかわからない状態なんです』
「…まさか、そんな大罪を犯した、とか言わねぇよな?」
『まさか。追っ手は幕府関係ではないと思います』
「思います?」
『私にもはっきりとは追っ手の正体が分かっていないので』
「そうか……」
土方が何か悩んでいるかの様に答えると突然、沖田が
「近藤さん。この子と僕で、一回手合わせさせてもらえませんか?」
と、近藤に声をかけた。
「そうだな…彼らを殺してしまえるぐらいだからな…よし、総司。いいだろう。」
『えっ。』
驚く洸。
「近藤さん!!」
少しばかり怒りそうでもある土方。
「まぁいいじゃないか、トシ。獅子藤君はそれでいいかね?」
近藤は土方に声をかけつつ、洸に訊いた。
(拒否権はなさそうだな。)
『…いいです、分かりました。』
こうして沖田対獅子藤の手合わせが行われる事となった。
〜前半・問答 終〜
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