淡雪と月光
□肆,偶然
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三番組の昼の巡察途中。
ドンッ
斎藤さんの肩と誰か町の人の肩がぶつかった。
「すいません、よそ見をしてたもので…」
その人の物言いは丁寧だった。
「こちらこそすまない。だがこれからはもう少し、前方を注意するといい。」
「はい。じゃあ失礼します。」
その人は私達とは逆方向に去っていこうとした…
『!!』
だが私は気付いてしまった。
その人が私のよく知る人物だということに。
『稀遊…何故、貴方が京に?』
そう私が呟いた時には、既に彼は居なかった。
「獅子藤、先程の人物…知り合いか?」
『本当かどうかは分かりませんが…たぶんそうです。』
彼は…榎北稀遊。
私は昔、彼と一緒にいることが多かった。それこそ四六時中ずっと、という感じでだった。
でも稀遊は…今では東の鬼を統べる家となった榎北家の頭領となったはず。
何故、稀遊が京に……。
私は何か悪いことが起こりそうな気がして、胸騒ぎがした。
〜肆,偶然 終〜