淡雪と月光
□陸,正体
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「で、話ってなんだ。」
今、大広間には幹部がほぼ全員集まっている。
初めて屯所に来た次の日と、まったく同じだ。
『皆さんが隠している…前川邸の隊士達のことです。』
そこで私は、あの隊士達の話を切り出した。
「ああ、そのことか。確か斎藤が昼の巡察が終わった後に獅子藤と、脱走したらしい隊士を見付け、対処したと言ってたな…。」
「はい、獅子藤に見られてしまったこと、申し訳なく思っています。」
「…でさ、僕が聞いた話だと、洸が“あの子達”の正体が分かった、っていうことだったんだけど…続き、話してくれる?」
沖田さんが鋭い瞳で尋ねてきた。
『はい。まず先に言っておくと…私は、斎藤さんに見つかるより前に何度かあのような白髪の新選組隊士を斬っていました。』
この件に関しては、もう今日でけりを付けようと考えていた私は、今まで隠していたことを話した。
「…獅子藤、お前……」
『黙っていたのは申し訳ないと思ってます。でも流石に私も、怖かったので…。』
ついでに、あの日どうなるか怖かったのも本当だ。
「…まあその事は不問にしてやる。続きを話せ。」
『はい。で、その時の経験と隊士として暮らしていたここ数週間で色々と判りました。
まず、その隊士達は一般の隊士には知られてはならず、幹部隊士の皆さんしか存在を知らないこと。
次に、そのためにその隊士達は、一般隊士からは隔離されてここ、八木邸ではなく、前川邸で暮らしていること。また、夜中その存在を知っている皆さん方幹部がこっそりと見回りをしていること。
最後に…その隊士達は人間離れした力を持ち、心臓を刺されない限りは死なないが、その変わりに髪が白くなり狂ってしまう、ということ。
つまり…』
「なんだ?」
『……何かの実験台ではないか、と。』
先に知っていた事をついさっき気付いた事のように話すのは心苦しかったけど、しょうがない。
こう告げるしかなかったのだった。
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