淡雪と月光
□漆,千鶴
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文久三年十二月
私が新選組へ来てから一ヶ月くらい過ぎた頃。
遂に恐れていた事態が起こった。
どうやら“新撰組”の隊士を一般人が見てしまったらしい。
その一般人に今日、皆で話を聞く、って言われたんだけど…
「連れて来たよ。」
そう言った源さんと一緒に来たのは…小さい子。
今、皆がピリピリした雰囲気を纏っているから、どうやら怯えてしまっているようだ。
皆は男だと思っているようだけど…明らかに女の子。
でも、それ以外にも何か違う…この子、まさか…。
「で、お前は何を見たんだ?」
「わ、わたしっ何も見てません!!」
“壬生狼”と恐れられている新選組に捕まってしまったことで、この子はとても焦っているらしかった。
「でも君、浅黄色の羽織を着た隊士に襲われそうになったんだよね?」
沖田さんが核心をつく質問をする。
「はい。あ…」
…これに引っ掛かるってことは尋問に慣れているわけではなさそう。
「ということはやっぱり全部見ちまった、っていうことか…」
「どうするんだ、土方さん。」
「やっぱり斬るのが一番早いですよ。」
殺伐とした会話。
その中に“斬る”という言葉を聞いた時、私はああやっぱり、と思った。
「!!」
連れてこられた子は…顔がひきつってる。
「待って下さい!…こんな所で死ぬ訳にはいかない…私にはすべき事があるんです!!」
「だとしてもなぁ…潔く死ぬのも男の道だぜ?」
「そうですね、あれは…人には見られてはならないものですしね…。」
『―待って下さい。そんなにも簡単に一般町民を斬っても平気なんですか。…そして、今皆さんが深いお話をするなら、俺は一度、この子を連れて退出します。』
このままでは彼女は斬られてしまう。
そう危惧した私は咄嗟に口を挟んだ。
「洸、なんでだよ?」
新八さんが怪訝そうな顔で問う。
『斬るしか方法がなくなるくらいの話をされては困ります。』
“新撰組”の情報は外にもらしてはいけない…自分達はそう言っている癖に新選組に接点のない女の子の目の前でその話をしようとしている。
それは、心苦しかった。
「あぁー。そうだな。」
「じゃあ獅子藤、頼んだぞ。」
『はい。』
というわけで私は、女の子を連れて一度廊下に出た。
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