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□貴方は、
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「やま、ざき…」
貴方は俺の顔を見て固まった。
「こんの、ばか、やろ…」
貴方は泣いている。
…泣かせているのは…俺。
だけど俺は、土方さんが泣いている理由がわからない。
他の奴らもいて皆、泣いている。
どうしてだ。
そう思い、ふと聞こえてくる音に耳を澄ませた。
…お経だ。
その時、悟った。
…ああ、俺は死んだんだ。
と。
「バカ…お前、今度二人でミントンやるっつったろ…。」
ああ、そんなことも約束したな。
というか副長、覚えててくれたんだ。
それが、嬉しかった。
そして、副長が平隊士の前にも関わらず号泣している…その理由が俺だったことも嬉しかった。
「上司守って…自分だけ死ぬなよ…」
大丈夫。貴方は俺がいなくてもきっと上手くやっていけます。
そう言って髪を撫でてあげたいのだけれども、もう今のこの俺にはその事を伝える口も、貴方を抱き締める腕もない。
「山崎…好きだ…」
周りの者には聞こえないように小声で出されたその言葉。
確かに嬉しい。
でも、そんな悲痛そうな顔で言わないで。
俺の事は忘れていいから、貴方だけでも、幸せに…
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もうすぐアイツの一周忌。
週一で訪れる場所。
…そう、アイツの墓。
ここへ来れば少しでもアイツと一緒にいられる気がして…
『なにのんびりしてるんですか。』
「!!」
―山崎の、声。
『貴方は俺がいなくても平気でしょう。俺の分まで…生きて。』
真剣に。
…俺は今週の仕事に向かってそう思いながら帰り道をあるきだした。
さよなら、俺の…愛しい恋人。
(俺も貴方のことが…大好きでした。)
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