□化け猫と少女
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「もしも彼女にバレてしまったら…?」

『隠し通せないのなら、全部失ってもいいよ。』


そう言って“彼”は笑った。


これは、こんな契りを交わして人と恋に落ちた、化け猫の話―。


++++++++++


僕がずっとここ最近ずっと気にかけてる女の子。
その彼女の恋人が、消えたらしい。

なんでも、彼は死病を患っていたらしい。
で、自分の見苦しい最期を見せたくない、とかで失踪したんだとか。

「大丈夫だよ。」

心配そうにすり寄る僕を見て、彼女はこんなことを言う。

でも、恋人を無くした彼女の顔は暗くなってた。

彼女によるとなんでも彼とは随分長いこと一緒にいたらしいから、心に傷を負うのも当たり前だ。

けれど僕は、彼女の笑顔を取り戻したかった。

だから誓ったんだよ、満月に。

「僕は、彼に化けて生きる。」と。


彼に化けた僕を見て、泣き崩れる君。
そんな君を僕は強く抱き締めた。

「もう、君を一人になんかしないよ。」


そんな確定はないのに言った言葉は、残酷だ。
―ああ神様、僕は残酷だ…。


記憶喪失を演じて、君を騙した。


でも君のその笑顔のためなら、どんな嘘も罪も許される。


そんな気さえしていたんだ…。


けど、ある晩ついに君は切り出した。


「ねぇ…貴方の瞳はね…総司とは違ってるの。だけどそれでも構わない。どうか、私の傍にいて。」


ついに気付かれてしまった。

そのことで震えだした僕を抱き締めて君は泣いた。


「お願い、もう一人にしないで。」


―ああ神様、これが罰なんですね。

僕は契りを破った。
だからもう、君の隣にいる資格はない。

段々と猫に戻っていく僕の体。
化けの皮が剥がれて、契りを破った代償で人の言葉も失って。

そうして逃げる僕の背中に、確かに君は言ったんだ、


…『ありがとう。』と。



―ああ、僕はなんて罪深い。

だから君よ、


どうか憎んでおくれ…。




〜終〜.
 

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