武神と巫女

□六,ネズミはネコより強い…と思う。
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試験当日。


普通の新人隊士達の試験が終わった後、私は手合わせしやすいように袴に着替えていた。


ちなみに今回の手合わせで使うのは竹刀。
昔はいつも竹刀で練習してたから…たぶん大丈夫かな。


「これから守村乙葉君の入隊試験を始める。まずは…対新入隊士!!」


今回の新入隊士は…五人。


少ないな、と思いながら『いつでも来て下さい。』と言った。


五人は一斉に斬りかかってきたけど…手を抜かれてるのかと感じるくらい動作が遅かった。
だから、瞬殺。
あっという間に終わった。


「早いな。じゃあ次は…」

『15人にして下さい。』

「はぁ!?」


今のが新人隊士なら、平隊士でも人数増やしても大丈夫そう。
そう思った私はかなり多めな人数を言ったのだった。


『幹部級の方々はそれくらいの人数を一気に相手取ることもあるんでしょう?』


第一、その人数を相手取れないようじゃ、白巫女の名が廃る。


「まぁ、な…」

『じゃあ15人で。』


フワリと笑いながら答えた。




その対決も…あんまり手応えがなくて。
あっという間に終わってしまった。


…もうちょっと手応えないとつまらないんだけどな…。
人数もう少し増やしてもらおうかな、と考えだすまでになっていた。





「なんだよアイツ…」

「俺達より全然強ェ…」



―元々いる隊士達は…そんな乙葉に驚愕の視線を向けていた。





〜〜〜〜〜〜〜〜〜





太陽が傾き始めた頃。ついに残ってるのは近藤さん、土方さん、沖田さんの三人だけ。


「ここからは木刀使用だ。」


土方さんが言った。


たぶん、より実戦に近付けることで、私の実力を計ろうとしてるのかな。

でも流石にこの髪型だとちょっとキツい。


『分かりました、少し待ってて下さい。』


そう言って私は下の方で結んでた髪を、ポニーテールに結び直した。


「じゃ、俺からいきまさァ。」


一番隊隊長ですしねィ、と付け加えて立ったのは沖田さん。


沖田さんは真選組内で五本の指に入る剣客だ。
何か気付かれてるかも。


「…そろそろ本気出しなせィ。」


やっぱりバレてた。


―そう乙葉は今日、今まで八割くらいの力で戦っていたのだった。


「「ええっ!?」」

『…バレてたんですか。』

「なんとなく。」


なんとなく、で分かってしまう沖田さんはやっぱりスゴい。

これは…本気出さないと申し訳ないな。


『…分かりましたっ!!』



ガンッ!!!


結構一気に攻めたはずなのに…。
木刀は見事に受け止められていた。


そして…


バァンッッ!


「しょ、勝利、沖田隊長!」


私の木刀は吹き飛ばされ、負けてしまった。


『流石です、沖田さん。』

「いや…乙葉も強いですねィ。」

「じゃ、まあ次は俺だな。」


次は土方さん。


「行くぞ!!」

『はいっ!』


バァンッ


土方さんの太刀筋はとにかく読めなくて…おまけに一回一回受け止める時に力が必要だった。

だから…


「うおっ!」


柄の部分を使って壁際まで追い詰める、っていうちょっとズルい作戦を使った。

壁際まで追い詰められた土方さんに木刀を突き付ける。


『はあ、はぁ…これでどうですか。』

「…ギブアップだ。」


これで土方さんには勝った。

残りは…局長。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





「最後は俺だ!」


と近藤さんが勢い良く斬りかかってきた。

けど…本当に申し訳ないんだけど…

最後はこれで、決めたかった。




―カンッ!!



…成功。



「「!?!?」」


皆は何が起きたのか分からないみたいで、ワタワタしていた。
あの土方さんも、だ。




―パチパチパチ。


そんな中、一つ拍手が聞こえてきた。



「…見事な居合いでさァ。」


沖田さんだった。


「総悟…今一体何が起きたんだ?」

「だから居合いでさァ、近藤さん。乙葉の居合い、達人級ですぜィ。一体どう修行したら女がこうも居合いの達人になるのか…つくづく不思議でィ。」

「確かにな…普通、木刀はこんな所まで飛ばねぇだろ。」


本当に皆驚いていた。けど、


『白巫女の名折れなんて、困りますから。』


そういうことですから。




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