武神と巫女

□十二、オタクの話し方が(略)嫌い。
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「………す、すいませんでした。まさかあんな所にいると思わなかったもんで…。」


収録が終わって万事屋に戻って来た新八くん。

そして私の隣で片腕を押さえて俯いているのは……紛れもなく、土方さんだった。


「ひ…土方さん。」

「いや…いいんだよ。この限定モノのフィギュア“トモエ5000”が無事だっただけでも良しとするさ。」


フィギュアを持って微笑むその姿に、“鬼の副長”の面影は無かった。


「…………えと、ありがとうございます。」

「……………ていうか…え?オタク……土方…くんだよね?ホントに。」


銀さんも新八くんも同様を隠せないみたい。


『どう見ても土方さんですよ、認めたくはないけど。』

「何を言ってるのだよ〜坂田氏ィ。」

「坂田氏!?」


でたよ氏付け。
私と話した時もそういえば予兆はあったんだ…。


「この通り正真正銘、土方十四郎でござる!!」


そう言いながら土方さんは警察手帳を出した。


いや出さなくても分かるけど…υ


「ござる!?」


いつの間にか神楽ちゃんと土方さん…否、トッシーは撮影会を始めている。


「…………なんで照れてんの?」


ついで銀さんは私に問いかけてきた。


「………オイ、どーいうことだコレは。」

『……私が屯所を出て少ししてからこんな感じになり始めたみたいです。』

「…本物みたいですけど別人みたいですね…。つーか土方さん…仕事はどうしたんですか。昼間からこんな所ブラついて。」

『土方さんなら…』


そこでトッシーが遮ってきた。


「仕事?ああ、真選組ならクビになったでござる。」



「え゛え゛ェェェ!?真選組を!真選組やめたのな、ななな、なんでェー!?」


新八くんは相当パニクってる。


「んー、まァ つまらない人間関係とか嫌になっちゃってね〜―」


ドカッ


あんまりにも、土方さんじゃ無かったのでついつい拳骨を落とした。


『黙って下さい。…正確には無期限の謹慎処分ですよ。』

「そうなんですか!?」


新八くんが驚くのも解る。だって“無期限の謹慎処分”って実際ほぼクビって意味だもん。


『うん。…私も、しばらくはもどれないかも。』

「一体お前等の組織はどうなってんだ!!」

『……』


これには黙るしかなかった。


「まァ今は働かないで生きていける手段を探してるってカンジか――」


ニートの考え方をしてるみたいだからも一発殴っといた。


『トッシー失せろ。出てこい副長。』

「怖いですよ…」

「痛いよ、乙葉氏ぃ〜そうだ!考えたら君らもニートみたいなもんだろ??」

「誰がニートだ!一緒にすんじゃねーよ!!」

『っていうか氏付けないで下さい。次言ったら昇天させるぞこら。』

「…聞こえない〜♪で、坂田氏、僕と一緒にサークルやらないか?今、僕TO LOVEるの同人本描いてるんだけどさ…ジャンプに詳しい坂田氏と僕なら夏コミで荒稼ぎ出来ると思うんだ。」


ひじ…トッシーが机に置いたのは子供の落書きにも見える位の同人本。


なんかもう…イライラしてきた。


『馬鹿ですかあなた。こんなん売れるワケないじゃないですか。だからいい加減消え失せろトッシー。』
「売れるかァァ!!ガキの落書きじゃねーか!!」


流石の銀さんも思わずツっこんだ。
というか…人って短期間でこんなに変われるモノかな?


何かおかしいような…




「まいったな〜貯金をほとんどフィギュアで使っちゃってね。いっそもう刀でも売るか。」


そう言ってにこやかに笑うバカアニメオタク。


「最低なんですけどこの人!フィギュアのために侍の魂売ろうとしてんですけど!!」

「もう何度も売ろうとしてるんだけどなーんかどうしても手放せないんだよ〜。」


私は呆れてものも言えなくなってたけど…トッシーの次の言葉に、また少しとっかかりを覚えることになる。


「店の人が妖刀とかいってたけど、まさかね〜。」


そう言ってトッシーは私達の目の前に刀を出した。


これが、妖刀なのだとすれば…全ての辻褄が合う。


「あぁ!ひょっとしてある朝、目覚めたら妖刀が美女に変わって僕――」


ドカッ


とりあえずムカついたから、もう一発かました。



『銀さん…私を鍛冶屋に、案内して下さい。』







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