剣と華
□あの人を想う
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「ねえロビン!見て見て!これ似合う?かわいくない?」
「あら、かわいいじゃない。とっても似合ってるわよ。」
「ほんとー?じゃあこれにしよっかな!でもあっちの白のダウンもかわいいわよねー!」
ここはとある冬島。私は今ナミとショッピング中だ。冬島とは言え、季節は秋なので、厳しい寒さではない。
女と言うのは、毎年季節が変わるごとに新しい服を調達したくなるものよね。グランドラインにいると、季節がしっちゃかめっちゃかだから、新しい島に上陸するたびに服を買い込んでしまう。
もったいないとも思うけど…でもナミとこうして女同士ショッピングに出掛ける時間が好き。妹ができたみたい。でも、実は私よりしっかりしていて、姉みたいだと思う時もある。
ナミは、今手に持っているピンクのチェックのダッフルコートと、白のダウンコートで悩んでいる。どちらも、色白のナミにはよく似合う。
私にも何かいいコートはないかしら。すると、好きな色である紫のロングダウンを見つける。ウエストのあたりにシェイプがかかっており、フードと袖口には黒のファーがついている。
思わず手に取り、羽織ってみる。
「ロビン素敵!ロビンらしくていいじゃない!いいわよねー。背が高くてスタイルがいいから、何でも似合っちゃって。」
「そう?じゃあ私はこれにするわ。」
スタイルがいいのはナミの方なのに。
ナミにかかれば、どんな服も着こなしてしまう。
弾けるような笑顔で、服の方が霞んでしまうけれど。
「ごめんロビン。もうちょっと待って。なかなか決まんないわ。」
「ええいいわよ。じゃあ私はあちらの方も少し見てくるわ。」
時間潰しにコートを持って、店内を歩いてみる。
僅かながら男性用コーナーもあって、ふらふらと近づいてみる。
あの人に似合いそうなものはないかしら。
服には無頓着だから、似合いそうなものがあればプレゼントしようかしら。もうすぐ誕生日だし。
ナミの話によると、この島のログが溜まるのは少し時間がかかるらしく、長期の滞在になるらしい。だからその間に、彼の誕生日を迎えそう。
でも迷惑かしら。お酒をあげれば喜ぶのでしょうけど、何か違う物を…。
コートやセーター、手袋、帽子、マフラーなど色々手に取ってみる。何をあげれば喜ぶかしら。
こうして選んでる間、頭の中がその人のことでいっぱいになる。つい幸せな気分になって、思わず頬が緩んでしまう。
「それ、ゾロに?」
気づくと隣にナミがいて笑いかける。
「幸せそうな顔しちゃって。二人ともいつの間にか仲良くなってたわよね。でも良かったわ。」
ナミは、私とゾロが打ち解けるまで、実は色々と心配してくれていた。
あいつは普段からあんな顔なのよ。
きっとロビンが好みのタイプだから緊張してんのよ。
いつか理解してくれるわ。馬鹿だけど、馬鹿じゃないわ。
政府の手から逃げ出し、W7に帰ってきてから、ゾロと語りあった。
まるで、今までお互い馴れ合うのを避けていた時間を埋めるように。それで完全に壁は取り払われた。
話してみると、どことなく似ているところがあるのだろうか、波長が合うような気がするのが分かった。
だから、私とゾロがサニーの花壇の前で談笑しているとき、ふと視界に入ったナミはとても嬉しそうな顔をしていた。そしてピースサインをして、手を振りながら行ってしまった。
「そういえば、そろそろあいつ誕生日だったわよね…。私はプレゼントはお酒って決まってるけど。ロビンはそれにするの?」
「…そうね。でも迷惑じゃないかしら…。」
私が手にしているのは、緑のベースに、茶色とグレーのラインが入った毛糸の帽子だった。
緑色は彼の色だから。
「なーに言ってんのよ!あいつのことだから、ロビンがあげるものなら何でも喜ぶわよ、きっと!でもさすがロビンね!こんな短時間であいつに似合いそうなの見つけるなんて。」
そうかしら。喜んでくれるかしら。
もっとゾロの笑顔が見たい。それが私だけに見せてくれる顔ならば、もっと嬉しい。なんて、贅沢よね。
ウキウキしながらコートと帽子を抱えて会計に向かうと、ナミの独り言が聞こえた。
「恋しちゃってるわね、完全に…。」
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エピローグ
「恋…?」
「そうよ?もしかして自覚ない?」
「よく分からないわ…?」
「ゾロにとって、特別になりたいと思わない?」
「あら、どうして分かるの?」
「分かるわよ!分かりやすすぎるわよ!かっわいーロビン!」
「ナミは誰に恋してるの?」
「(ドキッ…)わ、私はいいのよ!」
「ずるいわ。ねぇ、教えて?」
「ハイハイ、また今度ね!あ、でもゾロではないわよ!安心して。」
「じゃあルフィ?サンジ?ウソップ?
フランキーとブルックは絶対違うわよね。ロボットと骨だし。チョッパーも違うわよね。獣だし。」
「ロビン、あんたやっぱ毒あるわね…」
END