拍手ページ作品

□世界に一つだけの…
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「ゾロ、話がある」

ルフィが俺の目の前に座り、いつになく真剣な顔で詰め寄られた。
「…なんだよ」
「お前、ロビンを幸せにしてくれんだよな?」
「ったりめーだ。言っただろーが」
「なら、何か忘れてねぇか?」
「…はぁ?」
気付くと、他の連中もじーっと俺を見ている。
何だ?何か忘れてたか?
船長の許可はもらった。
一味にも祝福された。
ロビンの気持ちだってとうに確認している。
あと忘れてることだと…?

「これだからマリモは…」
「鈍いやつね。ロビンが可哀想だわ」
ウソップとナミがため息混じりに俺を見る。
「ああ、ロビンちゃんは何故こんなアホを選んだんだ!」
コックが大袈裟に頭を抱えるので腹が立った。
「何なんだよ、一体…」
「おい、普通よ、子供を産む前に、けじめをつけるべきなんじゃねぇのか?」
フランキーに言われ、はっとする。
「まぁまぁ皆さん、昨日の今日ですよ。突然のことにゾロさんも頭が真っ白だったんでしょうから…」
ブルックにフォローされ、その通りだと頷く。
「父親としてだけ、責任を取るつもりはねぇ。ロビンを嫁にしたいと思ってるのは本気だ。ブルックの言ったとおり、子供のことで慌てちまったが…」
「うん!知ってるぞ!ゾロはロビンが大好きなんだもんな!」
チョッパーの言葉に若干照れ臭くなるものの、その言葉が全てだ。
「ならよ、結婚式しようぜ!」
ルフィの提案に驚く。
こいつの発想はいつも突然だから、慣れてはきたものの。
「…いつ?」
「今日!」
「…どこで?」
「ここで!」
「…どうやって?」
「みんなで!」
「いや、答えになってねぇだろ…」
果たして、やろうぜと言ってすぐできるもんなんだるか。
他人の式などにも呼ばれたことがないってのに。

「昨日の夜、ルフィに言われて準備はしてんだ。ほら」
ウソップが差し出した手には、細工の入ったシルバーのリング。
「オレが作ったんだけどよ、こんなんでよけりゃ使ってくれ。あ、そこの皿みてぇの…それそれ。そこ石がはめられるから、船のお宝の中から何か選べよ。研磨して完成させるから」
「私はこれよ。ロビンにかぶってもらうベール。ドレスが用意できなかったんだけど…でもうまいもんでしょ?!」
「オレは二人が永遠の愛を誓い合う宣誓台作ったぜ」
「私はお二人の為に曲を一曲…。式のときに演奏させて頂きます」
「オレはルフィとサニーに飾る飾り付け作ったんだ!なぁ、ルフィ!」
「ああ!おいサンジ、お前もだろ!」
「…ったく、ロビンちゃんの為だけにだがな、ウェディングケーキを用意する。あと、誠に不本意だが、てめぇにはオレのスーツを貸してやる。カッコだけでもよ、ロビンちゃんの美しさに釣り合わせねぇとだろ」
二度と返さなくていいぞ!汗臭ぇからな! と余計な一言まで言われる。
正直驚いたが、全員の気持ちをありがたく受け入れることにした。

ロビン、俺たちは本当に仲間に恵まれたな。
お前にも出会えたし、麦わらの一味は最高だ。
こういった形で祝福されるのは悪くねぇ。
というか、正直嬉しい。

コックからスーツを借り、着替えて船首で待っている。
少しだけ緊張する。
ふとルフィと出会った頃から今までをゆっくり回想してみた。
笑える思い出もあれば、悔しい思い出もある。
いい時間だ。

パチパチという拍手の音とヒューヒューという口笛の音が聞こえる。
甲板には、最高の一味と最高の女。
女はまるで女神のようだ。
美しい笑みを湛え、ゆっくり歩み寄ってくる。
「ゾロ」
ロビンは俺に手を差し出す。
その手を取り、顔をよく見ると少し泣いたのか目が赤い。

「よし、始めっぞ!」
ルフィの声が高らかに響いた。

つづく

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