短編・中編
□ハリー君を育てよう
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「リリーが…死んだ、ですって?」
私の名前はペチュニア・エバンス。
今、冗談みたいなヒゲをした冗談みたいな格好のおじいちゃんに、ジョークをかまされたみたい。それも最高にブラックなやつ。
しかも、おじいちゃんは腕に可愛いハリーを抱いているという念のいれようだ。
思わず、今日はエイプリルフールじゃなくてハロウィンよ、なんて言ってみるけど、おじいちゃんはアイスブルーの瞳を曇らせただけだった。
そんな訳ないわ。
私、昨日だってリリーから手紙を貰ったもの。
未だに結婚してない私にいつもみたいなジョークを交えた手紙。
まだ返事だって書いてないのよ?
「残念じゃが、嘘ではない」
アイスブルーの瞳は悲しみに押しつぶされそう。
私は頭が働かないまま、ハリーにゆっくりと手を伸ばした。
ついこの間会ったときには無かった額の傷が全てを語っているみたいだ。
指先から伝わる優しいぬくもりに、私の頬に涙が伝った。
でも心は認めない。
私の妹がもうこの温もりを感じられないなんて。
あのやかましい義弟の声が聞けないなんて。
「…二人の事、大変申し訳なく思っておる」
そう深々と頭を下げて、おじいちゃんはハリーを私に抱かせ、嘘みたいに掻き消えた。