ある凶王の兄弟の話2

□我が身我が意思
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私は小さな夢の中で、黒い水面の上に立っていた。生き物の鼓動を感じさせない静かな水の上。虚無そのものを具現化したような場所で、私は虚に浮かんでいた。
黒い水面に映るはずの自分の姿が見当たらない。鏡のような水面には、私の姿が映らない。
たったそれだけで、見知らぬ場所で1人取り残された迷い童子のような気分に陥った。

思い返すと、私は『恐れ』そのものに怯えていたのかもしれない。
もし周囲に否定されてしまったら、
もし自分を否定されてしまったら、
もし自分を認めて貰えなかったら、
もし周囲から疎まれてしまったら、
もし誰からも必要とされなくなったら、
思い起こせばキリがない。そういった思い込みは、心を縛り付け、行動を著しく制限し、同時に蝕んでいた。
結果として、「何も出来ない自分は駄目だ」という自責の念や、「私には兄弟と、そして周囲とも同じ事は出来ない」という諦めが生まれた。
この偏見や思い込みは、深い無意識の所にまで染み込み、制限的な思い込みにまで気付けなくなった。

そこから生まれるのは

底無しの悲しみだけなのではないか

          
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