パウリー
□ファーストコンタクト
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“シュボッ!!”
「ふぅーッ…で!!」
少しは大人しくしてるかッ?!などと濃い煙と共に吐き出した少しキツめの声を受けても尚、女は抵抗しようと暴れだした。
「やめとけ、もがけばもがく程食い込むぞ」
ソレ。そう苛立ちを足に伝えながら女に背を向け、後ろ手に指し示す女の身体を縛り付けたロープは、そのまま柱へと巻き付けてある。ついでにギャンギャンうるせぇその口に付けた猿ぐつわも。
『ふぅごー!!ひぃふぉ?!』
「あーだからお前が大人しくしてたら外してやるって言ってんだろ!!それ以上喚くと本当に吊し上げるぞ?!」
“ジジジジリ!!”
怒りと比例して凄まじいスピードで灰と化す口元の葉巻がまた1つ、その天命を終えた。
クソッ、あと3本しかねぇ…!!
着々と数を減らすソレに悪態つきつつ、口内で深く染み込ませる様に転がしていた煙を吹き出せば、遊び揺れる紫煙は鋭く光る割れた窓ガラスを越え闇へと溶け消えていく。
『ふぇっふぇっふぇっ…』
そよぐ夜風に深いため息を漏らしている中響いた、そのくぐもった笑い声に軽く視線を背後へ向ける。すると女は、その目元を愉快気に細め俺を見つめていた。
勘弁しろよ…女が部屋に居るってだけでも我慢ならねぇのに…だいたいこんな危ねぇ女に目を付けられる覚えなんざねぇぞ。
俺は再度女から視線を外し、爆発しそうなこの頭を抱えた。閉める術を無くした窓から音もなく吹き込む風が嫌に涼しく、それすら今は腹立たしい。
「おい女、選べ」
シュボッと新たに火を付けた葉巻から伸びる紫煙が不規則にユラユラ揺れる様を眺めながら、背後に向け声を放つ。
(ンマーパウリー、人と話す時は相手の目を見るもんだぞ。例えそれがお前の苦手とする女であってもだ)
耳にタコが出来る程言われてきたあの言葉が頭をよぎったが、女の顔は見ない…こいつは猿だ。人じゃねぇ。
「1、今すぐ此処から出てって二度と俺には関わらねぇ。2、このまま警察呼んで留置場。3、市長のアイスバーグさんは知ってるな?その人呼んで弁償諸々書面に記入し『4、このまま居座るッ』…は?」
今誰が…そう条件反射に振り返った先には…おい、オイ嘘だろ?!
「おッ、お前どうやってソレ抜けた?!」
んー?とニヤケ面を浮かべる女の足元にはダラリと張りが無く伸びる、今の今まで女を縛り付けていた筈のロープ。そしてその手には猿ぐつわ…ってかオイ?!
「お、おま?!カタ!!肩ズリ落ちてるから!!上げろ今すぐ着戻せ!!」
ズサササー!!と後退りする毎に足元でパキパキパリンと音を立て、ガラス片が更に小さく砕けていくがそんな事を気にする余裕すら今の俺には無い!!
「ハレンチだぞお前!!いい加減にしろよ?!」
『あー、気にすんな。少しだけデケェんだよこのオーバーオール…ったく、俺のなのに』
面倒くせぇ身体だ。などとブツブツ漏らしながらも女は腰辺りまでだらしなく下がったオーバーオールの肩紐を定位置へと戻していく。
何が少しだ…だいぶデケェよ!!ブカブカのダルダルだろーがフザケンナ!!
『あいよ、これで良いだろ?ったくウブな野郎はこれだから「出ていけ」へ?』
出ていけー!!顔を真っ赤にし怒号を飛ばす俺に女は口をあんぐりと開けたまま目が点。
『おいパウリー!!お前いい加減気付けよ!!俺は「喋るな出てけ今すぐだ!!力付くで追い出すぞ?!」プッチーン、やれるもんならやってみろやオラァ!!』
う"…力付くとなれば俺はコイツに触れなければならねぇ。さっきは咄嗟の事でつい身体が動いたが、相手は女…流石にこれ以上ロープはッ…
『あ〜ん?どうしたんだい、パウリーくぅん?良いんだぜ別に?ホレ、ホレホレ、お前の言う力付くっての見せてみろやオラ!!』
くッ…!!ムカつく!!