パウリー
□ファーストコンタクト
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“……シュボッ”
「はぁー……でさぁ、お前の目的は一体なんなんだよ」
結局、力付くて追い出す事など出来ぬまま…
あぁ、どうせ俺は腑抜けだ。訳分かんねぇ女に触れるぐらいなら腑抜けにもなってやるさ。
ズルズルと壁伝いに腰を下ろし項垂れれば、足元で無数に散らばったガラス片には、俺の情けねぇ面が映り込み同じ顔で俺を見つめている。
『だーから俺は最初っから言ってんだろ?話を聞けってさぁ』
なのにお前が…なんてグダグダ続く無駄話を遮り、聞くから話せ。と語気を強め言い放つ俺は、早く得体の知れねぇコイツから解放されたい。
「用件はなんだ。俺に何の恨みが有る」
窓まで割りやがって…ため息と共に吐き出したその嘆きに女が、は?と素っ頓狂な声を上げた。
『恨みなんかねぇよ。何お前、俺に何か恨まれるような事したの?』
…は?
『あ、分かった!!さてはこの前ロッカーに入れてた俺の秘蔵エロ本コレクションを捨てたのってお前だな?!』
はぁ?!
「テメェ女がそんな単語軽々しく口に出すな!!ハレンチだぞ!!」
『…着眼点そこ?』
いや何故俺がそんな馬鹿を見るような目で見られなきゃなんねんだよ!!絶対おかしい!!
『はーい、アホのパウリー君の為に復唱しまーす。パウリー君はぁ〜、俺のエロほ「うわぁぁぁ!!いい加減黙れお前!!」…』
「良いか?!倭の国にはなぁ、大和撫子って言葉もあるんだ!!女は清楚に慎ましく『その話し長い?』聞けゴラァ!!」
サササッと床を掃除!!スペース確保!!
「ハイそこ座れ!!正座!!」
キョトンとしている女を大声で怒鳴りつけ、昔俺が聞いた大和撫子論を伝授、伝授、伝授からの刷り込みだぁぁぁ!!
───────ーーーー
「ハァハァハァ…はぁ…少しは分かったか?」
一通り熱く語り終えた頃にはスッカリ俺の息は上がっていた。何で俺がこんな訳分かんねぇ女の為に無駄な体力使わなきゃいけねんだよ…
数十分ぶりに視線をやったあの女は、正座した膝の上で拳を握り項垂れて…少しは自分の立ち振る舞いを反省してくれたか?
「まぁ分かってくれたんならもう良いからよ、とりあえず出てってくれ」
『……うぅ…』
「お、オイまさか泣いてんのか?!ちょ、勘弁してくれよぉ…」
『…………』
「なぁ、俺もキツく言い過ぎちまった事は謝るからさ!!泣くな、な?!」
アタフタ慰めの言葉を並べるも女は一向に顔を上げてはくれず…うわマジ面倒くせぇー!!
漏れかけた舌打ちを何とか飲み込んで、苦々しく歪めたこの顔をひと撫でし、二の足踏む自分を追い立て恐る恐る躊躇いがちに腕を伸ばす。
そして女の肩にこの手が触れるかという位置まで距離をジリジリ詰めていった時、耳についたその息遣いに俺の動きはピタッと止まった。
「お前、まさか…」
『…スピー…スピー…うぅん…スピー』
「……………」
ね…寝てやがる、だと?!
『スピー…うぅ…じゅるッ、んは?朝か?』
よし警察だ。