パウリー

□寝言は寝て言え
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“コツ…コツ…コツ、コツ、コツ”


『………』


“コツコツコツコツコツ”


『…吸えば?』


テーブルを挟んで反対側に居る女が、椅子の上で小さく膝を抱えながら遠慮がちに真ん中に置かれた灰皿と、最後の1本となった葉巻を遠慮がちに指差す。


そこで俺は初めて、自分が無意識の内、苛立ちから指先でテーブルに乱暴なリズムを刻んでいる事に気が付いた。


「チッ、これでラストなんだ。今買いに出る訳にもいかねぇだろ」


もう少し我慢する。そうぶっきらぼうに言い放つ俺に女はため息と共にその腰元にあるポケットをゴソゴソ漁り、ホラ。と何かを俺に投げ寄越した。


『もう1箱あるから、ソレはやる』


新品だ、有り難く吸えよ!!などと恩着せがましく笑う女が再び身体をずらしポケットから取り出したのは、いましがた俺に渡した物と同じ、俺もよく知る銘柄の煙草。


「…ハッ、随分重いの吸ってんな。女なんだからもう少し身体を労れよ」


『うるせぇな、お前だって毎回葉巻が切れたらコイツ吸ってんじゃねーか。お前こそ労れ』


「ッ?!」


慣れた手つきで手元の新しいソフトパッケージのビニール封を切るこの女は、何故そんな事まで知っているんだ?


確かに仕事中ブツが切れ、どうしても買いに行けねぇ程立て込んでる時、俺はコレを吸って気を紛らわせる…アイツから貰って。だが外でそんな代用品に手を出した事はねぇぞ。


「おいストーカー女…お前何者だ。探偵でも雇って俺を調べまくったのか」


『は?』


ストーカーってお前…そう嫌そうな顔を向けてくるこの女の顔を、仕方無しに遠目からマジマジ観察するもやはり、記憶の欠片に掠りもしない。


間違い無く、初対面だ。


『……アップル海賊団の船、なんとか間に合って良かったな』


「…?あぁ、社員総動員で取り掛かったからな」


『いやアレは骨組み職が何とか遅れを取り戻したからだろ。特に俺』


「…あぁ、優秀な奴等だからな。特に頑張ってくれてたのはお前じゃなくて、あそこの職長だ」


『いや〜そんな誉めんなって!!』


「いやだからお前誉めたんじゃねぇし。何で今お前が照れんだよ」


『………』


「なぁ…病院、紹介してやろうか?」


『………』


うわ〜史上最強の馬鹿が目の前に居るよー。とでも言いたげな、ってか目が…この女の冷め切った目が、明らかにそう訴えてきてんだけどよぉ、俺何かしたか?
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