パウリー
□天秤にかけたモノ
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仕方なしに広げた手紙の冒頭には、海賊らしからぬ感謝の言葉が綴られていた。
仕事柄、海賊ってもんに特別偏見も持たねぇが、こうも常識的な輩だと逆に…
“注文していた船の支払いはコレで頼みます。売るなり食うなりお好きにどうぞ。売れば1億は下らない物だと思うので…”
元は充分取れるかと。って、はぁ?!
「1オクゥ?!テメェ1億の実を食ったのか!!吐け、今すぐ吐き出して復元しろ!!」
1億あったら俺の借金全部消えんじゃねーかよふざけんな!!
『無茶言うなって。吸収しちまったからこうなってんだろ?』
うっわ殴りてぇ?!コイツが今女の姿してなかったら、その身体吊し上げて胃から内蔵まで全部纏めて引きずり出してやんのに!!
『どーせ、その金で借金返済〜。とか…下らねぇ事考えてんだろ?夢物語は良いからまず続き、早く読めよ』
コッイツ…ぜってーいつかブッ飛ばす!!
苛立つ心を何とか鎮め、既に握り潰されているソフトパッケージの傍らに置かれたもう1つのソレから煙草を取り出し、残り少なくなったマッチを力強く擦る。
大分薄くなったこのパッケージを見る限り、最後の最後まで残してあるあの1本に手を出さざる得なくなるまで、そう時間は掛からなさそうだった。
その現実にまたイラつき、舌打ちを漏らしつつも再度手元の紙へと視線を落とす。
“こんな珍しい代物を自分達で使わない手はないもんですが…生憎、うちの船員に女性は居ない。だから、貴女に差し上げよう。男の世界で働くのは何かと大変だと”
「これで気難しい職人達を手懐けて下さい…って、結局なんなんだったんだよ」
曖昧に意味深長な文が綴られただけの紙を乱雑に投げ捨て、横目でチラリと補足を求める俺にコイツは大きなため息を吐く。
そして、俺が食っちまったのはな…と、面倒臭そうに放たれた声が続けた言葉は…
「は?悪魔の実?」
『そッ、あろう事か俺は呪われた秘宝を食っちまったらしい』
「………で?」
『…で?って?』
「いや、悪魔の実って言ったら…それぞれに悪魔が宿ってて、テメェの身体に何かしらの能力を与えんだろ?」
『そうだよだから困ってんだろ?!』
「え、いやさ……え?まさか本当に身体が女になるってだけか?!」
うわどんだけ貧乏クジ引いたんだよコイツ!!やっべウケる!!
『ちょ、笑い事じゃねんだよ!!まだ話し終わってねーぞコノヤロウ!!』
いや笑うなとか無理だろ?!はら、腹いてぇー!!